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スタンダード会員限定賃貸住宅に規律と秩序を トラブル事例と居住者対応(第6回) 原状回復を巡るトラブル 立証責任は賃貸人側に

住宅新報 2009年1月27日 号 11面

意識の高まり

 国土交通省のガイドラインや、いわゆる東京ルールによって「敷金は戻ってこない」という考え方が、変化し始めている。また、居住者の権利意識や関心の高まりもあって原状回復に関するトラブルは依然として賃貸住宅トラブルの上位を占めている。トラブル事例(1)

 居住期間約7年の入居者が退去に当たり、「請求された修理費は、故意過失によるものではなく通常損耗に当たり、貸主が負担すべきだ」と主張して譲らず、少額請求訴訟を提起されたケース。

 裁判官は、「故意過失による汚損または破損は家主側が立証せよ」という見解。

 「畳はすべて摩耗していたか。摩耗の度合いは同じか。襖の汚損の程度は。修理する襖8枚の汚損は同程度か。襖の汚損は7年程度の使用で自然損耗なのか、故意に汚損したものか。クロスの汚れは煙草のヤニが原因とあるが、どのように汚れていたか。クロス4平米張り替えというのはどの個所か。台所、浴槽、洗面化粧台の清掃とあるが、どのような汚損か」などの立証が求められた。結果、十分な立証ができず、台所などの清掃費用は通常損耗と判断され、和解勧告を受け入れた。反省点は、修理費算定の立ち会いでトラブルが生じているのに、(1)退去時の状況写真を撮って記録を残さなかった(2)住宅を現状保存せず補修工事をしたこと--が挙げられる。トラブル事例(2)

 居住期間約6カ月の居住者で、「入居時から畳は汚れており交換していないと思った。いつ取り替えたのか。入居1年前に取り替えたなら、それは新品と言えるのか。襖は半年間押し入れにしまい込んでいたのに、なぜ張替え費用を取るのか」と主張し、修理費の返還請求を求める少額請求訴訟を提起されたケース。

 居住者は、「契約時に原状回復に関する説明はなく、その認識がなかった。入居時に、汚れ、クモの巣、ゴキブリの糞が点在していたが、『空家であり新築ではない』と説明されて苦情申し出もできなかった。何かを落として傷をつけたとか、煙草の火で焦がしたとの事実はない。通常損耗は居住者の責任ではなく、修理費を負担する必要はない」と主張し、最後は、和解勧告を受け入れた。

 ここでも、退去時の現況写真などの記録を残さずに補修工事を行い、居住者の故意過失の立証が困難であったことが反省点である。

 契約時及び退去時に、居住者負担となる損耗等を個別部位ごとに分かりやすく例示した説明書を提示するなど、原状回復の内容を居住者に理解させなければならない。例えば畳は、『居住者負担は、煙草による焦げ穴、家具を引いたことによる擦り傷、故意・過失による傷・破れ、家具による著しいへこみ』『家主負担は、通常使用による擦り切れ、日焼けによる変色、家具跡』という具合。負担例示を明確に

 同様に、トイレ、壁、建具、天井、襖、浴室、台所、洗面台、床等の各部位について負担区分の例示をすべきである。特に通常損耗以上の修理費用を特約で居住者に負担させる場合には、相当に細やかな説明や手続きを行わない限り、居住者負担の合意が成立したとは認められない(最高裁H16(受)1573号

 敷金返還請求事件)。居住者に対する修理費請求は、不法行為に基づく損害賠償であり、賃貸人側に立証責任があることを忘れないように。

 (瀬戸一郎=賃貸管理会社勤務)

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