よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第108回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く 長島・大野・常松法律事務所弁護士 三上二郎氏(1)
住宅新報 2010年6月1日 号 3面
「有識者に聞く」シリーズの第31回目は、長島・大野・常松法律事務所の三上二郎弁護士に、近時、その重要性がますます高まってきているコンプライアンスについて、お話をうかがいます。長島・大野・常松法律事務所は、約350人の弁護士が所属し、スタッフも含めると総勢約700名に及ぶ企業法務を中心とする日本最大級の総合法律事務所であり、三上弁護士は不動産関連案件を中心に第一線で活躍しておられます。線引き難しい『社会規範』
高まるコンプライアンス意識(田辺)
三上先生は不動産投資・証券化分野の仕事に、長い経験をお持ちだとうかがっています。(三上弁護士)
当法律事務所自体が、不動産関連分野にはかなり力を入れており、何らかの形でこの分野に関与する弁護士は40-50名に及んでいます。
私もその一員として、日本の不動産証券化の黎明期である90年代後半から証券化案件に携わってきました。
証券化の初期段階において、ある大型レジデンスの流動化案件に取り組み、様々な契約書を最初から作成したことは、今でも記憶に残っています。その後、Jリート(日本版不動産投資信託)の立ち上げから運用に至るまでの一連の取引なども担当し、証券化に関しては一通りの経験をすることができました。また、その間に私募ファンド、Jリートのガバナンス、コンプライアンス態勢の整備などについても関与してきました。(田辺)
今日は、そうした豊富なご経験を踏まえた中で、不動産投資・証券化を中心とする不動産取引におけるコンプライアンスについて、お話をうかがいたいと思います。そもそも、コンプライアンスとはどういうものと理解すべきでしょうか。(三上先生)
コンプライアンスは「法令遵守」と訳されることが多いのですが、法令に違反しなければ良いということではなく、広く社会規範を守ることだと考えなくてはなりません。ここで社会規範というのは、その遵守を義務付けられている法令だけでなく、社会から期待されている規範までも含むものです。(田辺)
企業のガバナンス(企業統治)とコンプライアンスの関係については、どのように考えれば宜しいでしょうか。(三上先生)
ガバナンスとコンプライアンスは概念上重なる部分もありますが、大まかには、会社が目的を達成するための機構、仕組みがガバナンスであり、ガバナンスを有効に機能させるために必要なものがコンプライアンスであると整理することができると思います。ガバナンスを達成するための重要な手段の一つがコンプライアンスであると言い換えても良いでしょう。(田辺)
近時、コンプライアンスがますます重用視されるようになってきたのは何故でしょうか。(三上先生)
コンプライアンスに関しては、古くは米国のエンロンやワールドコムなどの粉飾決算などで問題になったことがありますし、最近ではライブドアや一部のファンドでも話題になりました。こうした事件が、コンプライアンスの重要性を社会的に広める役割を担ったことは事実です。
ただ、より本質的に考えると、昔と比べて取引や契約が複雑化してきたことが、その背景となっているのではないでしょうか。
取引や契約が複雑化することによって、それが違法ではないにしても、社会が期待する規範に合致しているのかどうか、その線引きが非常に難しくなってきています。
そうした中で、一部の企業の行為が社会から疑問視されるケースが増えてきており、それがコンプライアンス重視の経営が求められることになった背景の一つになっていると考えられます。
(つづく)













