信託物件 『実物』取引で売却 直接移転方式を応用 フクダリーガルがファンドに提案
住宅新報 2009年1月27日 号 6面
信託受益権化された不動産を、現物売買で処分する方法が模索されている。不動産ファンドやJリートが組成物件を譲渡する時に、相手方が個人投資家や一般事業会社の場合、信託受益権の売買で処分しようとすると、相手方が「信託受益権」の意味をよく理解できないで交渉が難航するケースが増えているという。また、信託受益権の売買では、一般の宅建業者が仲介を扱えず、売却先を探すのにも大きな制約がある。フクダリーガルコントラクツ&サービシス(福田龍介・代表司法書士)はこのほど、こうした問題をクリアする登記スキームを開発し、ファンドを通じて信託銀行と詳細の交渉に入った。
(遠藤
信明)
従来、信託受益権化された物件をファンドが処分する場合、信託受益権の状態で譲渡する方法を取っている。相手方は取得した信託受益権を現物化するために、信託銀行と交渉して信託を解約し、改めて「所有権」として物件を取得する手間をかけている。
信託受益権として物件を取得することで、物件の買主は、一時的にでも複雑な「証券化」の仕組みの中に入り込むことになる。
受益権での取得を検討する一般事業会社では、ファンドが運用している物件は取得したいものの、信託受益権での取得となると、前例もなく、稟(りん)議が通らないなど、難しい問題を処理しなくてはならないこともあるという。「よく分からないものを取得したくない」という心理もあるが、昨今の金融危機が証券化から生じたことへの過剰反応もあるようだ。
ファンドの売却担当者も、「信託受益権で取得する意味はどんなものか、物件取得を検討しているアマの一般ユーザーに説明することは容易ではない」という。そのため、ようやく見つけ出した買い手を逃してしまうこともあるようだ。
一般事業会社や個人投資家は、物件を通常の所有権として取得したい。最初から通常の不動産売買契約書で所有権として直接取得する方法があれば、信託の解約の手間もかからず、すっきりしていて望ましい。
ファンド自身が信託を解約して、現物化して売却すればよさそうだが、ファンド自身が信託を解約すると高額の「不動産取得税」がかかるため、所有権として取得することは避けたい。不動産特定共同事業法(不特法)の許可が必要になるという問題もある。
そこで、ファンドと取得希望者が通常の不動産売買契約書で契約し、信託銀行からファンドを介せずに直接買主に所有権を移転する方法が、これらの問題を解決する方法として考案された。「第三者のためにする契約を活用」
まず、第1の契約として、信託銀行と信託の受益者(ファンド側)が、信託解除契約(解約)で、所有権の移転先について「第三者のためにする契約」の特約を付け合意する。
具体的には、「信託の受益者が解約による所有権の移転先となる者(受益者を含む)を指定できるものとし、その指定と同時に信託銀行が指定先に所有権を移転させる」ように決める。
信託契約の条項では、受託者である信託銀行と受益者で、条項の内容を委託者の権利を害さない限度で自由に修正できるとされていることが通常で、このような特約を付けることも合意次第だ。
こうすることで、後日、受益者(ファンド側)が移転先を指定し、移転先が信託銀行に「受益の意思表示」をすることで信託物件の所有権が信託銀行から移転先として指定された者に移転する。所有権の移転登記も信託銀行から指定された者に直接行うことができる。
このような解除契約(解約)の合意をしたうえで、第2の契約として、ファンド側(信託の受益者)が最終取得者と不動産売買契約を締結する。
この売買契約の法的性質は、あくまで不動産の現物売買であり、他人物売買契約となる。信託銀行が所有する物件をファンド側が他人の物として売買するためだ。他人物売買は、民法により法的に有効で、売主の取得移転義務は「第三者の弁済」として履行できる。
他人物売買は宅建業法で原則禁止されているが、売主が宅建業者であっても、信託の解除契約で第三者のためにする契約を締結しているので、07年7月10日に、宅建業法施行規則15条の6で除外規定として追加された第4号の規定により、適法に取引可能だ。
この売買契約の代金決済時に、先の信託解除契約の移転先として、売主(ファンド側)が買主を指定し、買主が信託銀行に受益の意思表示をすれば、所有権を取得できる。
このようなスキームを使うことで、個人などの最終取得者は、信託受益権を直接扱う必要はなくなる。ファンド側も不動産取得税がかかることはない。
このスキームは、福田司法書士らが提唱した中間省略登記の代替手段を応用したもので、信託解除で中間者が取得せず直接第三者に移転させるので「直接移転信託解除」というものだ。「1社介在させ、不特法クリア」
スキームのメリットはこれだけではない。信託受益権売買では、仲介するのに第2種金融商品取引業者の登録が必要になる。受益権化されたファンドの物件は、一般の不動産業者は直接仲介できない。
しかし、ファンド側と最終取得者が現物の不動産売買契約を締結するなら、一般の宅建業者が仲介可能になるはずだ。信託銀行から所有権を買主に直接移転する手はずが整っていると説明することになる。
信託受益権の仲介ができる第2種金融商品取引業者は1000社程度といわれているが、不動産売買契約なら13万の全宅建業者が物件を仲介できる。昨今のように買い手を探すのに苦慮するような市況では、ファンドにとってそのメリットは小さくない。
ただし、このスキームを使う場合、ファンドが匿名組合で信託受益権のみを運用しているときは、ファンドが不動産売買契約を締結すると、不動産特定共同事業に該当し、許可が必要になる可能性があるという指摘がなされている。
不動産証券化に詳しい根井真弁護士は、「Jリートなら現物を運用できるので他人物売買をしても問題は全くない。しかし、信託受益権のみを扱う匿名組合型のSPCが現物売買をすると、不特法に抵触する可能性がある。ただ、ファンドが別の会社に信託受益権を譲渡する形を取ればその問題もなくなる」という。
フクダリーガルが進めているスキームは、不特法の疑義を回避するため、ファンドが別の会社に信託受益権を譲渡し、その別会社が受け皿となって信託契約を解約し、直接移転のスキームを実行する方法を採っている。不特法の問題が解消できるなら、ファンドが直接最終取得者と現物売買の契約をするシンプルなスキームが活用可能になる。
これについて根井弁護士は、「信託受益権をGKTKスキームで運用していた場合に、入口でSPCが現物不動産を取得して即日信託する場合は、国交省では不特法の許可が必要ではないと考えている。しかし、出口段階で信託解除後にSPCが取得するケースでは、不特法の許可が必要と国交省は一貫して答えている。入口では、取得から即日信託までのほんの一瞬の利益についても信託していたと評価しているが、出口では信託解除後に現物不動産売却までの利益を信託で吸収する余地がなく、不特法の要件に該当すると考えているようだ」とし、国交省への確認が必要と前置きしたうえで、「出口段階においてファンド(SPC)と最終取得者で現物不動産の売買契約を締結し、最終取得者には信託銀行から現物交付を行わせる方法であれば、ファンドとしては一瞬たりとも現物不動産を持たない。現物不動産の運用を行ってないため、不特法違反の懸念は解消されるのではないか」としている。













