よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第106回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く 全米リアルター協会日本担当 三澤 剛史氏
住宅新報 2010年5月18日 号 3面
住宅価格に底値感
雇用と設備投資の回復がカギ(田辺)
全米リアルター協会の中で、アジア太平洋地区総括責任者というのは、どのような役割を担っているのでしょうか。(三澤氏)
全米リアルター協会は、米国の不動産を売買しようとする海外の方々へのサービスという意味合いに加え、米国だけでなく世界の不動産市場の発展、業界の人材育成などに貢献しようという趣旨から、各国の業界団体と連携しながら活動しています。
アジア太平洋地域では、日本のように既に不動産市場の制度整備がしっかりしているところもありますが、東南アジア諸国のように発展途上のところも数多くあるので、こうした国々の制度整備、人材教育、業界団体設立などへのアドバイスをしています。
日本では90年代後半から順次、全国宅地建物取引業協会連合会、不動産協会、不動産流通経営協会、全日本不動産協会と覚書(MOU・Memorandum
of
Understanding)を締結し、06年には全日本不動産協会と正式な業務提携(BA・Bilateral
Agreement)を調印して連携を図っています。日本の宅地建物取引のシステムは、元々、米国カリフォルニア州の制度を参考にしてつくられているので、その意味では昔から深いつながりがあるともいえるでしょう。(田辺)
次に、米国の住宅市場の動向についてお話を伺います。サブプライム問題以降、市場に回復の兆しは見られるものの、本格的回復にはまだ時間がかかりそうだという見方が日本では有力です。(三澤氏)
米国では新築住宅が年間30万戸着工されるのに対し、既存住宅は年間500万戸以上、販売されています。すなわち、既存住宅市場の規模が、新築住宅の10倍以上あるのです。ところが、日本では米国の新設住宅着工数が報道されることが多いので、それが減少すると、市場はまだ良くないという判断をしてしまいがちです。
また、日本ではサブプライムローンというと、「信用力の低い低所得者に対する住宅ローン」だと理解されていることが多いようですが、自営業者や移民の方などへのローンも含まれており、必ずしも信用力だけが低いわけではありませんし、そもそも「信用力」とは何なのかも説明されていません。人数割合で見ても、該当者は10人に1人くらいです。そもそも、米国の個人の35%は住宅ローンを返済済みであり、今回のサブプライムローン問題の影響を受けていません。こうした事実をきちんと把握することなく、米国の住宅市場について語られることが多いのではないでしょうか。
住宅市場をトータルで見ると、金利の低下に加え、住宅購入の際の頭金の費用化などの税制改正の効果もあり、徐々にではありますが市場は活性化しつつあります。住宅価格に底値感が出てきたので、担保処分による住宅ローンの回収(Foreclosure)も進み始めましたし、これらの物件には複数の買い申し込みが入ってくるようになりました。
ただ、今後も順調に回復していくかどうかは、雇用状況にかかっています。直近の米国の失業率は10%を切りましたが、本格的な雇用の回復には、公共事業の拡大だけでなく、民間設備投資の着実な増加が望まれます。(田辺)
08年秋以降の金融危機の中で、米国の銀行の貸し渋りが問題視されましたが、現在は解消されているのでしょうか。(三澤氏)
金融危機の際、米国の銀行も日本同様に貸し渋りとメディアでは報道されていましたが、全くの誤報です。日本では銀行が不動産に貸し出しを全くしなかったのが事実ですが、米国では債務者の信用力の問題もさることながら、銀行自体に貸し出すお金がなくなってしまったことがより大きな原因でした。
従って、銀行の財務状況の改善のために政府による公的資金が入ったのですが、銀行がローンの貸出基準(債務者の信用力をスコアリングするもの)を厳格化するようになったので、住宅ローンを借りるハードルが高くなってしまったのです。ですから日本で報道されているのとは全く違った環境に多くの金融機関は置かれていたのです。
(つづく)













