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スタンダード会員限定よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第39回> 不動産証券化の現状と将来展望(10) 有識者に聞く ニッセイ基礎研松村氏(2)

住宅新報 2009年1月20日 号 6面

〔田辺〕

 今回の不動産投資市場の回復時期を探るに当たって、不動産市場以外の要因として勘案すべきポイントは何ですか。〔松村氏〕

 最も重要なポイントは、やはり金融機関の動向だろう。欧米のCMBSレンダー(不動産担保付きローンを証券化して売却する貸し手)が、証券化市場の混乱から不動産市場に資金を供給できない状況にある。一方、日本の銀行もBIS規制(銀行の自己資本比率規制)の問題もあって、リスク資産となるローンを増やすことは難しい。エクイティに投資してきた機関投資家の多くも慎重姿勢にあり、デット(借入れ)、エクイティ(資本)の両面にわたって資金供給が極端に絞られている。これらの資金パイプが復活しないと、不動産投資市場の本格的な回復は難しい。

 ただ、このような信用収縮を引き起こしたそもそもの原因の1つとして証券化やファンドビジネスにおいて、インセンティブ報酬で過大なリスクテイクに走った投資銀行のビジネスモデルを問題視する見方があるが、的を得ていると思う。今回の金融危機は証券化の仕組みの問題ではなく、それを動かしている人や組織の問題という見方だ。この点は市況回復後も、各プレーヤーが深く胸に刻み込んで行動する必要がある。

 不動産賃貸事業は、本来ディフェンシブかつサステイナブルなものであることを、一般に再認識してもらうことも重要だろう。事業者サイドでそうした努力をしなければ、市況が悪化したときに、いわゆるマスコミによる「ヘッドライン・リスク」に再び翻弄される恐れがある。〔田辺〕

 最後に、不動産投資市場の今後の見通しについてご教示ください。〔松村氏〕

 金融危機の発端が証券化商品であったため、証券化悪玉説もあるようだが、証券化はもともとツールにすぎない。ただ、当面は、証券化手法を用いたハイレバ商品(借入比率を高めて投資利回りを上げること)や複雑な仕組み商品、原資産のトレーサビリティー(追跡可能性)のない商品の組成には慎重にならざるを得ないだろう。

 日本でSPCを活用して不動産が証券化できるようになってからまだ10年しかたっていない。その意味では、不動産証券化も現在の困難な時期を経て、ようやく市場がこなれてくると期待している。

 実物不動産(賃貸不動産)そのものは、安定的な収益を生み出す特質を有する資産であり、かつ、不動産市場の情報流通量増加で、市場がオーバーシュートする可能性は以前より低下している。平成バブルの発端が、国による東京のオフィスの過大な需要予測であったことを思い出せば、この違いは理解できると思う。15年前に賃貸オフィス市場を分析していたアナリストは数名しかいなかったが、今では相当程度の人数に増えており、それぞれの意見も異なっている。これらが、市場のブレを極端なものにしない方向に作用する。

 最近、弊社のオフィス賃料査定モデルの当てはまりが向上してきた。これはモデルの精緻化もあるが、情報流通量の増加によって、合理的に行動するテナントが増えてきたことによるところも大きいと考えている。このような市場の変化は、REIT市場創設がきっかけとなっている。REITによって、市場に大量の不動産情報が流通するようになったことに加え、REITアナリストの誕生などによって情報分析力も飛躍的に向上したためだ。

 一方、グローバル化が進展する中で、金融市場のボラティリティーが大きくなったため、金融市場との結び付きが強くなった不動産市場が、その影響を受けるようになったのは必然といえる。人口減少時代の日本は、年金運用をもっと真剣に考えるべきで、国内外の金融市場で長期安定的な利回りを確保できる投資対象が必要とされている。この有力候補のひとつがREITではないだろうか。

 JREITに関していえば、投資主の立場からREITとスポンサー会社との関係の在り方を見直すことが求められる。

 不動産証券化そのものは今後とも積極的に活用すべきだが、今回の教訓を十分に生かすことが重要である。やはり、証券化商品に関わるプレーヤーの姿勢が大事である。

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