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スタンダード会員限定「農」でつながる人と人 畑付き賃貸の力(上)

住宅新報 2010年4月20日 号 1面

 自然回帰や「農」ブームを背景に登場した畑付き賃貸住宅。物件も徐々に増え始め、注目を集めている。だが、戸数が制限される分だけ、空室時のリスク分散ができないなどの側面もあわせ持つ。「畑」を集客時にとどまらず、高い入居率を維持する強みとして生かすには、それを介して生まれる「つながり」に目を向ける必要がある。畑付き賃貸の可能性を探った。

 (鹿島

 香子)「自宅にあったら」

 経験からニーズ確信

 家庭用耕うん機がヒットするなど、都心部で「農」がブームだ。実践者数の正確な把握は難しいが、自治体が運営する貸し農園への応募状況が、その実態を知る目安になる。

 東京23区で最多の41農園を管理する練馬区では、09年度にすべての農園で抽選を実施。最高倍率3.6倍を記録した。同区都市農業課の担当者は驚きつつ、「前年までは定員に満たない園もあった」と話す。いずれの農園も週末が特に賑わい、若い世代や家族連れの姿が増えたという。また、食の安全に対する関心や「子どもに土遊びをさせたい」など、参加動機が多様化しているのも最近の傾向のようだ。同区では今年度、新たに2園の開設を予定している。

 こうした機運が高まるなかで注目を集めるのが、敷地に畑を組み込んだ賃貸住宅。07年秋に完成した東京・足立区の花園荘は、「畑付き」を明確に打ち出した先駆け事例として話題になった。老朽化したアパートの建て替えにあたってオーナーである平田裕之氏のアイデアを形にし、メゾネット型の各戸に約17平米の畑を付けた物件だ。また平田氏は、構想から完工までの全過程をブログで発信する、ユニークな試みを実践。相場より2割ほど高く賃料設定したにもかかわらず、全4戸が募集後2週間で満室になった。

 一方、直近では東京・葛飾区で、畑付き戸建て賃貸「ベジハウス」の建設が進んでいる。建築プロデュース業のウィークエンドホームズ(東京都渋谷区)が開いた設計コンペで、1位を獲得したカトウアーキテクトオフィス(東京都中野区、加藤雅康代表)が、オーナー宅と併設する賃貸棟の設計を手掛けた。

 物件の周辺は区画整理事業の対象区域にあたる。その規制のため当初計画より棟数を減らすことになり、各棟の敷地に余裕が生まれた。そこで、スペースを活用しつつ物件の付加価値を高めることのできる「畑」に着目したという。

 「畑付き賃貸のニーズは確実にある」(加藤氏)。そう語る言葉には、実体験に基づく説得力がある。加藤氏自身も貸し農園を利用し野菜作りに取り組んでいるが、通いでの作業に負担を感じる場面が少なくないためだ。特に収穫期は足を運ぶ頻度が増すため、時間の管理が難しい。「自宅に畑があれば、それに越したことはない。賃貸住まいでも、そう考える人が多いのでは」。周りの利用者の反応からも確信を深め、ベジハウスの設計に取り掛かった。

 賃料は駐車場代や戸建てである点を加味し、相場より高めの18万円に設定。周辺では今後、区画整理の進展に伴いアパートの建て替えラッシュが予想されるが、畑というコンセプトが競争力につながるととらえている。

 『差別化の切り札』として期待される畑付き賃貸。だが、単に畑を「付けるだけ」の発想では集客ツールで終わるどころか、入居者が手入れを怠り『荒れ地』と化す事態をも招きかねない。畑付き賃貸を供給するメリットを発揮するには、設計上の工夫はもちろん、「なぜ農がブームなのか」という原点に立ち返って考える必要がある。

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