「鰻の寝床」 松岡英雄 新住まいのことわざ(11)
住宅新報 2010年4月13日 号 12面
間口が狭くて奥行きの長い建物、場所などをたとえて「鰻の寝床」という。
新聞人・大庭柯公(おおば・かこう)は「其日の話」(大正7年)の中で次のように書いている。
「大阪の町屋の建物が、屋内の割に間口が狭く、見かけのいかにも貧弱なのは、封建時代に御上(おかみ)の誅求(ちゅうきゅう)の眼を避ける方法が、今日に遺伝したのだそうだ。財界のお歴々方が、近来の脱税振りの鮮やかさ厚顔さ加減を見ると、間口を狭くした浪華の町人どもの方が、床しくもまた憐れに思われる」
京都の町家も同じで、入口から裏口まで続く「通り庭」に沿って、店の間、台所、奥の間と続いている。「通り庭」は店脇の「店庭」と台所脇の「走り庭」に別れ、家の者以外は「店庭」までしか入れない。
桃山時代に豊臣秀吉が「地口銭(じくせん)」と称される、家の間口の広さに応じた課税をしたことから、「鰻の寝床」様式の町家を建てて節税をしたと言われている。
間口、奥行きという言葉が出たついでに、『間口ばかりで奥行きがない』は、種々雑多なことを知っていても、深くは通じていず、浅薄であることをたとえていう。『間口を広げる』は、事業や研究の領域を広げるたとえ。『奥行きが深い』は、知識や考え、あるいは芸術品などの趣が、はかり知れないほど豊かであることをいう。
ところで、「寝床」という言葉は今の子供たちに通じるのだろうか。
(住宅エッセイスト)













