「単身世帯増え、賃貸需要高まる」 賃貸住宅事業で方向性 近代化センターが自主研究
住宅新報 2010年4月6日 号 1面
原状回復や滞納・明け渡しをめぐるトラブルが増える一方、賃貸管理に係る法整備も進展しつつあり、賃貸住宅を取り巻く事業環境の変化は著しい。不動産流通近代化センターの「不動産流通センター研究所」はこのほど、こうした民間賃貸住宅市場の需要動向と、今後の方向性を探る目的で、「賃貸住宅事業の新たな流れ、方向性」と題した報告書をまとめた。全国の賃貸管理業者に対する調査・ヒアリングを踏まえて、これからの賃貸管理業を展望している。
報告書はまず、賃貸需要を支える国内の世帯動向に注目した。
国内の世帯はこの先ダウンサイズ化が進むものの、05年から30年にかけた世帯減少率は0.5%にとどまり、9.8%に達する人口減少率より小さい。
単独世帯に限ると、総世帯数に占める割合が05年の29.5%から30年の37.4%へむしろ増加が見込まれるとし、この単独世帯の受け皿として一定の賃貸需要が今後も継続する可能性が高いと指摘している。
ただ、空室率の高止まりや供給過剰であることも事実で、市場ニーズに対応した適切な品質、管理形態、契約条件などを備えた事業への取り組みが重要だとしている。活発なIT活用
昨年11月から今年2月にかけて行った実地調査では、賃貸住宅管理に前向きな50社(資本金1000万円以下23社、同1000万-1億円以下21社、1億円超6社)に対し、「賃貸経営を進める15のポイント」(別表)についてそれぞれヒアリングを実施した。
そのうち最も多い31の業者が選んだのが「ITの積極活用」だ。個別には、「ネットの用語検索で自社サイトを見つけてもらい、入居に至るケースがほとんど」「常時1万人のユーザーを確保し、このニーズを汲んだ物件を供給して事業を拡大中」「複数の外国語ホームページを立ち上げた」などや、「入居者との情報交換の充実を目指している」といった集客以外の活用事例も見てとれた。
24社が選んだ「地域密着」は、大手・中小共通の課題。ヒアリングでは、「市のループ型路線交通エリアに営業対象を限定し、域内でナンバーワン業者を目指している」「社屋を地元サロン化し学童保育、地域清掃、通学路の安全誘導などの活動を幅広く行っている」「無人家屋の庭清掃を請け負い、地域環境の維持につなげている」「地元に詳しいグループ、企業、士業が加わった地域再生事業を進めている」などの事例が聞かれた。定期借家も積極化へ
契約関係では、中小の導入も目立ったサブリースは定期借家と共に積極的に活用していることや、定期借家活用では一時金をできるだけなくし月額賃料ベースの経営を進めている傾向などが強く表れたという。
報告は、賃貸住宅を作れば入るという市場環境は終わり、賃貸管理、賃貸経営のプロとして賃貸人、賃借人双方の顧客満足を高めるニーズを汲み取った運営、コーディネートの能力が必要と結論づけている。
同時に「交流」や「つながり」の場を住居内から近隣や地域社会にも広げる中心的な役割を賃貸管理会社が将来担っていく可能性も持っているとまとめた。
一方、国土交通省はこのほど、「任意の業者登録制創設」についての意見募集を始めた。賃貸住宅管理に対する一定のルールが導入されようとしているわけだが、これに対する管理業者の反応は「メリットもあればデメリットもあり、まずは運用を見守りたい」といったところが大勢を占めたという。
ただ、一定のルール付けによって「住まいを借りる対価として賃料を支払う」、それによって「どこまでのサービスが受けられるのか」といったことを、ユーザーが改めて認識する良い機会になる可能性は高い。
また今回のヒアリングでは、定期借家権の活用を積極化したいと考えている業者が増え始めていることも明らかとなった。同センターでは「更新を繰り返していくのではなく、一定期間ごとに契約関係を確認する意味でも定期借家は有効ではないか」と見ている。別表・「賃貸住宅の運営・管理に関する質問項目」【1】15社/賃貸管理事業者が賃貸人となりうるサブリース方式を積極的に採用している【2】13社/事業承継者が新たな展開を図って事業活性化を進めている【3】16社/定期借家契約を積極的に活用している【4】12社/既存住宅等をリノベーションにより再生させストック活用を進めている【5】10社/賃貸借契約締結時の一時金の収受をできるだけなくし月額賃料をベースに経営を進めている【6】23社/賃借人(消費者)の顧客満足度をメインにおいて管理業務を進めている【7】9社/煩雑で手間隙のかかる業務を積極的に取り入れている【8】10社/ペット共生、戸建賃貸などターゲットを絞り込んだマーケティングで賃貸経営を行っている【9】9社/高齢者、外国人、障害者などの入居を積極的に進めている【10】8社/女性の感性を活かし女性に好まれる賃貸住宅を基本に経営戦略を進めている【11】24社/地域密着・地域・地元活性化を図る不動産経営を進めている【12】28社/外部のネットワーク、専門家等との連携を積極的に進めている【13】31社/インターネット等のITツールを積極的に活用している【14】14社/入居者間の交流、つながりを積極的に進める賃貸住宅を供給している【15】4社/入居者の自主的な運営、地域社会等との交流、コミュニティ活性化を図る賃貸住宅を供給している













