アナザーアングル 住宅業界ニュースの行間を読む(41) 住まいの価値観向上へ好機 堅実な若者多い現実
住宅新報 2009年1月20日 号 3面
久米宏さんのテレビ番組「テレビって奴は!?」(日本テレビ系列)の1月14日放送分で、面白いテーマを取り上げていたので、まずはそれから話を進めたい。前防衛省航空幕僚長の田母神俊雄氏をゲストに迎えてというのが番組のメインの内容だったがそれはさておき、面白かったのは別コーナーで新社会人の学生さん20人に対してバブル経済の頃の映像を見せて、この時代の出来事を「あなたちは肯定できますか」とちょっとしたアンケートを行っていたことだ。紹介された映像は例えばジュリアナ東京で踊る若者たちや、就職活動が超売り手市場だったこと、DCブランドブームの話など、いわゆるバブリーな出来事ばかりだ。例えば当時、高級外車を乗り回し、デートの時は全部支払いをしないと男性は女性にもてなかったとか、そのような話も紹介されていた。
今年の新社会人は、バブル時代を謳歌した親たちの子どもだそう。久米さんは「まさにバブルの子だね」と評していた。重要なのは、前述したアンケートの新社会人の反応だが、ごく少数の肯定派はいたものの、大多数が「肯定できない」「理解できない」というものだった。親世代の若かった頃とは価値観が大きく異なることがみてとれる。同時に「これからの日本は良くなると思いますか」という問いかけに、「良くはならない」と若い世代が見ていることも紹介されていた。
新社会人は非常に現実的、クールと評価できようか。あまり過度な贅沢を求めない堅実な彼らを商売相手とすることは、今後の住宅・不動産業界にとって大変難しい状況になるかもしれない。しかしながら、それは逆にチャンスのようにも思える。例えば、住まいという観点からみれば、堅実であるということは良質なものを供給する者にとっては好都合である。バブル時代は、高級外車を乗り回しつつも住まいは安アパートなんていう極端な話もよく聞かれた。要するにお金の使い道の問題で、高級な車に乗るよりも良質な住まいを選択するという層がこれからはもっと増えてくるのではあるまいか。
住宅のライバルは同業他社のみならず、実は高級ブランドや外食産業、旅行など高額な商品・サービスを提供する業界だったといえなくもない。本来、住まいに費やすべき費用が、そうした業界に回っていたため、日本人は住の分野で貧困だったのかもしれない。比較して欧米が住分野で恵まれているといわれるが、欧米人は意外に粗食だしお金の使い方にはシビアだといわれている。
今回は新社会人の意識を取り上げたが、かれらの考え方が今の時代の雰囲気を良く表している。今後ますます、私たち日本人はお金の使い方に厳しい選択を迫られるだろうが、そんな中でも住の分野にコストをかけてもらえるように、私たちは商品やサービスの内容向上に頭をひねらなければならない。今の経済環境は確かに業界にとって逆風だが、国民の住まいに対する価値観を高めてもらうよい契機ともいえる。そのために広い意味での住宅教育が重要となる気がしてならない。不況、不況と嘆くのも結構だが、こう考えると今の現状も少しは前向きに捉えられる。※田中直輝(たなか・なおき)氏
70年生まれ。福岡県出身。早稲田大学教育学部卒。98年から住宅業界専門紙記者として一貫してハウスメーカーを担当。07年からフリー。













