不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編(15) 借家権譲渡の場合、敷金は承継されますか?
住宅新報 2010年3月16日 号 6面
Q
借家権(建物賃借権)の譲渡を仲介する場合に、当然出てくる問題として、従前の敷金が譲受人に承継されるのかという問題があります。
つまり、譲渡人が過去に差し入れていた敷金が、そのまま譲受人が差し入れた敷金となることで、貸主が譲受人に対し、敷金の返還義務なり清算義務を負うのかという問題です。A
この点について判例は、敷金は新たな借主には承継されないとしています。
つまり、従前の敷金は、従前の借主と貸主との間で清算されるべきものとして、新しい借主(譲受人)には承継されないとしているのです。
したがって、このような借家権譲渡の仲介をする場合には、譲受人に新しく敷金を差し入れてもらう必要があるということを事前に説明しておく必要があります。譲渡人の方にも、原状回復との関係で、貸主がいったん清算を要求するということもありますので、その点についての従前の借主と貸主との間の敷金清算を確実に行っておく必要があります。
なお、借主が家賃の滞納などをしていた場合には、当然その分が敷金から差し引かれるわけですが、それでも滞納額が多すぎて差し引くことができないという場合には、従前の借主は、その分を借家権の譲渡対価の中から貸主に支払うということが条件になるでしょうし、また、その滞納額を含めた承諾料の支払いが借家権譲渡の承諾の条件ということになるでしょう。Q
ところで、このような借家権の譲渡の仲介というのは、宅建業法の適用を受けるのですか。A
受けません。借家権(建物賃借権)は「債権」ですから、宅建業法の適用外です。Q
ということは、仲介手数料はいくらもらってもよいということですか。A
その通りです。ただ、いくらもらってもよいと言っても、そこにはおのずから妥当な額というものがありますので、そのあたりのことは、事前に、当事者がよく話し合って決めておくべき問題です。ただ、その借家権の譲渡が、譲渡権利付の借家権であった場合には、その従前の借主である譲渡人が支払った「権利金」などの額が譲渡対価として授受されることになるでしょうから、もしそうであるとすれば、国土交通省告示に準じた考え方として、その権利金の額、つまり譲渡対価の額の3%というものが、手数料としてのひとつの目安にはなるでしょう。
(渡邊不動産取引法実務研究所
代表
渡邊秀男)













