「障子(しょうじ)に目」 松岡英雄 新住まいのことわざ(5)
住宅新報 2010年3月2日 号 10面
障子は太陽の光を和らげて室内に採りいれる働きをする。光の反射を写しとる。日本家屋だからこそ、求められてきた障子の役割である。自然光に頼っていた祖先は障子で陰影の妙を楽しんだ。美意識である。
マンションには和室のない間取りが案外多い。和室がなければ、障子は必要ない。障子の良さを知らないで育つ日本人が増えていく。谷崎潤一郎が「陰翳礼讃」の中で、「もし日本座敷をひとつの墨絵に喩えるなら、障子は墨色の最も淡い部分であり、床の間は最も濃い部分である。」と書いたのは、昭和8年ごろである。
部屋は明るい方が使いやすい。作業をするには当然である。勉強机には電気スタンドを置くが、部屋の明かりも点けておかないといけない。一方、ゆったりとくつろぐには、少し暗い方がよい。ホテルの室内照明が暗いのはそのためだろう。
障子洗う、という秋の季語がある。障子の紙を新しいものに貼りかえるため、障子に水をかけて紙をはがす。そのあと、障子貼る、という段取りになる。秋から年末にかけて、そういう風景が町のあちこちで見られた。昔の日本の風物詩だった。懐かしい。
『壁に耳あり、障子に目あり』が馴染んでいる。どこでだれに聞かれ見られているかわからないということで、秘密のもれやすいことをいう。油断ならないのである。
(住宅エッセイスト)













