キーマンに聞く 鑑定業の新しい役割(3) 役割の変化と課題
住宅新報 2010年2月9日 号 2面
多様化、高度化する鑑定評価への需要。鑑定評価制度の一部見直しはそうした時代の要請で行われたわけだが、鑑定業界側はどう対応するのか。今回は日本不動産鑑定協会会長の神戸冨吉氏に、不動産鑑定評価の役割の変化と直面する課題や取り組み、更に鑑定業界の今後の在り方などを聞いた。◆役割も変化の過程
--不動産証券化の進展などで鑑定評価の役割は変わりましたか。
「不動産鑑定評価制度は、公正な価格秩序を不動産市場に導入することを本来的な目的として1963年に制定され、今日までその役割を果たしてきた。不動産と金融の融合が進んだ90年代後半以降、市場構造が大きく変わり、鑑定評価の役割も大きな変化の過程にある。不動産・証券化市場の安定的な成長には、証券化商品の信頼性・透明性の更なる向上が不可欠だ。また、企業会計基準のグローバル化で、不動産の時価評価や保有不動産の効率的な活用を促す動きも出てきた。いずれも不動産鑑定評価分野と深いかかわりがある。それだけ鑑定評価の役割が高まると共に、品質の高いサービスが求められている。それを提供するのが我々の使命でもある」◆官民の役割分担
--今回の制度一部見直しに伴う対応は。
「こうした不動産鑑定評価に対する多様なニーズに対応するため、国土交通省は『不動産鑑定評価基準の一部改正』及び『価格等調査ガイドライン』を10年1月1日から施行。同時に、日本不動産鑑定協会は自主的な取り組みとして『鑑定評価実務の各般にわたる業務指針・実務指針』を策定して、全国14会場で3800人を超える会員に義務的研修を実施した。鑑定評価の品質向上、業務の信頼性向上のためだが、今回の鑑定評価制度の一部見直しは、激動する社会・経済のニーズに応えるため、官と民の役割分担によって実現した。これを経済の発展、国民生活の安定、鑑定評価制度の持続的成長につなげることができればと思っている」◆価格競争からの脱却
--当面する課題もいくつかあります。
「いま、鑑定業界はかつてない困難に直面している。その1つは、依頼者側の不動産鑑定評価業務の発注方式が、企画競争方式から価格競争方式に移行しつつあることだ」
「それに伴い、過当な受注競争による鑑定評価の品質の低下が懸念されている。不動産鑑定評価は法律により規定された不動産鑑定士の業務で、弁護士、公認会計士などの業務と同様、価格競争になじみにくい性格を有している」
「鑑定評価の持続的な品質を確保することは鑑定評価制度を支えるための最優先の課題であり、いま最も力を入れて取り組んでいる課題でもある。国民の理解を得ながら、均衡のある発注方式への転換を関係各方面へ要望していきたい」◆地域格差解消も課題
--東京と地方都市などの地域間、大手と中小事務所間での格差もあります。
「鑑定評価ビジネスが集中する東京と公的土地評価に依存する傾向の強い地方都市との間、業務環境の地域的格差と、大規模事務所と小規模事務所の規模的格差が拡大していることが挙げられる。特に高度の技術、情報、知識、機動力などの総合力が求められる不動産証券化、企業会計の時価評価などの鑑定評価の分野では評価依頼が大手事務所に集中する傾向がある」
「この偏りを解消するために、中堅、新進の鑑定業者も参加できるフィールドを確保したい。それが鑑定業界全体の実力の向上と受注体制のすそ野を広げ、厚みをつけることにつながる。喫緊の課題として取り組みたい」
(おわり)※かんべ・とみきち=かんべ土地建物(株)取締役副会長。東京都不動産鑑定士協会会長、日本不動産鑑定協会常務理事、同地価調査委員長などを経て、07年から現職。現在2期目。













