大言小語 譲り合う心
住宅新報 2010年2月9日 号 1面
東京・江東区に数代続く居酒屋がある。現在の建物は56年前に建て替えられたという。午後4時に開店するが、1時間も経たないうちに満席となる。カウンター、テーブル、座敷を合わせ30席程度。その魅力は「安い・旨い・感じいい」。
▼客のほとんどが常連。それも店主、客共に親の代からといった風情である。満席になるまでは先代夫婦がひなたぼっこのように座敷の上がり口に腰かけ、ときおり客の顔を眺める。注文を聞き、手際良く料理を運ぶのは奥さん。ご亭主はもっぱら奥の厨房だ。店内の混雑がピークに達し始めると、先代夫婦もそれとなく手伝いを始め、おそらく4代目となる息子さんも厨房から顔をのぞかせ、客の注文を要領よくこなす。さすがだ。
▼カウンターとテーブルの椅子はお世辞にも座り心地がいいとは言えない。だから少数客の多くはあまり長居をしない(とくにカウンターは足が疲れてくるので無理)。面白いのは一組が出ていくと、待っていたかのごとく次が入ってくる。2人出て行って3人入ってくると、物理的には不可能なのに、客同士が身を寄せあって何とか座れるスペースをつくる。昔の日本人なら誰もが持っていた自然な所作である。













