不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編(12) 「正当の事由」とはどういうものでしょうか?
住宅新報 2010年2月2日 号 6面
Q
今までの紙面で、貸主から借主に対し、建物賃貸借の更新を拒絶したり、解約の申し入れをするには、「正当の事由」というものが必要だということは分かりましたが(借地借家法28条)、その「正当の事由」というのは、どのようなものなのでしょうか。A
「正当の事由」とは、借地借家法28条の条文からもお分かりのように、貸主・借主双方の建物使用に関する必要度というものを中心にして、そのうえで現在及び過去の経過を踏まえた貸主・借主双方の事情を総合的に検討し、その有無を判断していこうというものですから、そう簡単に結論が出るというものではありません。
しかし、一般的な考え方に従えば、貸主は生活に余裕があるので自分の家を他人に貸すことができるということ、そして、借主は自分の家を持っていないので他人の家を借りて住むということが、一応は言えると思います。
そのように考えてくると、一般的な考え方としては、貸主より借主の方に建物使用の必要度が高いということが言えるのですが、もともと建物の賃貸借というのは、長期間にわたる契約関係がベースになっていますので、その間に、貸主にも借主にも事情の変化というものが生じ、そのうえ建物自体も古く、陳腐化してくるという宿命を負っています。
そうなると、例えば、建物周辺の都市計画の変更などによって、その建物が周辺の建物に比較し、狭小なものとなり、土地の有効利用もできていないということも生じてくるわけです。
単に貸主と借主の建物に対する必要度というものだけではなく、それを超えた何かが、貸主に「正当の事由」があるか否かを判断する重要な要素となってくると思われるわけです。Q
だんだんと分かりにくくなってきましたが、要は「正当の事由」というのは、貸主と借主の建物に対する必要度が中心になって判断されるが、それだけではなく、その後の時代の変化や貸主・借主双方の事情の変化なども考慮に入れながら、総合的に判断されるということですね。A
その通りなのですが、その点について申し上げておきたいことがあります。
借地借家法28条に定められている「建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、(更新拒絶の通知や解約の申入れは)することができない」という規定、これがまさに顕著な条文です。
つまり、先程申し上げた時代の流れの変化に対応するための知恵として、今までの判例を踏まえたこの「財産上の給付」という文言が、これからの「正当の事由」の有無を判断するキーポイントになるのではないかと思っています。
渡邊不動産実務法研究所
代表
渡邊秀男













