大言小語 煩悩とは
住宅新報 2010年2月23日 号 1面
「三丁目の夕日」でおなじみの漫画家西岸良平氏には、ほかに「鎌倉ものがたり」というシリーズがある。魔物が登場し、人間と共に鎌倉に生きる様を描くファンタジーとして人気だ。鎌倉と言えばお寺が有名で、作品にも頻繁に出てくるが、その中で、高僧が次々と魔物に襲われるという巻がある。名刹や大寺院の住職が仏力で立ち向かうも全く歯が立たない。ついに、小さな寺の和尚だが、天下の高僧と名高い人物が魔物と対峙する。
▼仏教関連の本を読むと常に出てくるのが「煩(ぼん)悩」との対決だ。十の善行を定めている十善戒や六つの実践徳目である六波羅蜜(ろくはらみつ)でも、不邪淫、不慳貪(ふけんどん)、持戒、忍辱(にんにく)と、煩悩をいかに持たないかということがいやと言うほど出てくる。それを克服することが仏に仕える第一歩なのだろう。
▼しかし、人間が生きるのに「煩悩」は不要なのか。人より早く出世したい、人より器量が良くなりたい、金持ちになりたい、そうした欲望こそが、この社会を作り上げ、人間を進歩させてきたのではないか。煩悩そのものが、人間が生きることの証なのではないか。
▼和尚は、大寺院の横暴により不遇な環境にあった。魔物の正体こそ、捨て去ったねたみなどの煩悩であると気付き、最終手段で倒す。煩悩が頭脳を支配している筆者では、終生、その『魔物』には打ち勝てそうにない。













