キーマンに聞く 鑑定業の新しい役割(2) 価格等調査と価格査定
住宅新報 2010年1月26日 号 2面
「媒介行為の一環」か否か
国土交通省の「価格等調査ガイドライン」と「運用上の留意事項」を受けて、日本不動産鑑定協会は業務指針と実務指針を策定・施行した。その中でも誤解を招きやすいのが不動産鑑定士・業者が行う「価格等調査」と、宅地建物取引業者が仲介業務推進の一環で行う「価格査定」。取引現場では一部混乱も見られる。そこで今回は「価格等調査」と「価格査定」との違い、法的裏付けなどについて、この問題に詳しい弁護士の中村しん吾氏に聞いた。◆最近の問題事例
--インターネットなどで「価格査定」を売り物にする宅建業者が増えています。仲介業務の一環というより価格査定そのものを売っていると取られるケースもあるようですが、鑑定業と仲介業の境目はどのように。
「まず、仲介業者の価格査定が『不動産鑑定業者の登録を受けないものは、不動産鑑定業を営んではならない』とする不動産鑑定評価に関する法律(不動産鑑定評価法)に抵触しないか。併せて、宅地建物取引業法(宅建業法)では『価額又はその評価額』の判定・表示を媒介行為の一環と位置付けているが、実際に行っている価格査定業務が同法により許容されるものか否かが問題となります」◆鑑定評価法の観点
--不動産鑑定業を定義すると。
「不動産鑑定評価法によれば、『自ら行うと他人を使用して行うとを問わず、他人の求めに応じ報酬を得て、不動産の鑑定評価を業として行うこと』と定義付けられています。従って、価格査定の不動産鑑定業への該当性は『他人の求めに応じ報酬を得て』『不動産の鑑定評価』『業として行うこと』について検討することになります」
「まず、顧客からの依頼により実施すれば当然『他人の求めに応じ』に該当。また、物件調査料などを受領する場合は『報酬を得』に該当すると解されます」
「次に不動産の『鑑定評価』とは、『経済価値を判定し、その結果を価額に表示すること』と定義付けられています。従って、誤解されている場合が多いですが、不動産鑑定評価書と言った体裁ではなくても、また、不動産鑑定評価基準に依拠した内容ではなくても、『適正な物件評価・不動産調査資料』などとして提供すれば『鑑定評価』に該当。さらに、複数から反復継続して申し込みを受けて価格査定業務を行えば『業として行うこと』に該当すると解されます」
「つまり、鑑定業者の登録を受けずに、不特定多数を対象に有料で価格査定業務を行うことは、不動産鑑定評価法33条に違反するものと思料します」◆宅建業法から見ると
--宅建業法上、価格査定の位置付けは。
「ここも誤解が多いのですが、確かに、宅建業法上の『価額又はその評価額』の判定として行われる価格査定は不動産鑑定評価法33条の例外として認められると考えられます。しかし、それは、『媒介行為の一環』としてなされるものでなければならず、媒介行為と独立して判定、表示することを含むものではありません。従って、媒介行為とは無関係に価格査定を行ってしまえば、宅建業法により不動産鑑定評価法33条の適用を免れることにはなりません」
「他方、仮に宅建業法上のものと位置付けた場合であっても、価格査定の対価として物件調査料などを受領することは、宅建業法46条(報酬)に違反するものとなります。媒介報酬は対象となる『宅地又は建物の売買又は交換』の契約成立を条件として、かつ、契約成立の対価として発生するものと解され、広告料金を除くその余の報酬の受領を禁じています」
「従って、複数の依頼をうけ「物件調査料」など媒介報酬ではない報酬を得て行う価格査定の実施は宅建業法により許容されるものではなく、不動産鑑定評価法33条に抵触する結果になると解されます。他方、宅建業(仲介業)の一環としてそのような価格査定を実施し、媒介による契約成立もないのに報酬を受領すれば、宅建業法違反に(も)該当すると思われます。いずれにしても十分な注意が必要です」※
なかむら・しんご=94年3月、早稲田大学法学部を卒業後、97年4月に弁護士登録。07年1月からラーネッド総合法律事務所を共同経営。不動産鑑定評価にまつわる事件をはじめとする不動産の分野や複雑な事件の解明力に定評がある。













