大言小語 『パワースポット』ブーム
住宅新報 2010年1月19日 号 1面
東京・明治神宮の敷地内にある井戸が、ちょっとしたブームだ。この井戸「清正の井」は、虎退治で知られる武将・加藤清正が掘ったと伝えられ、招福スポットとテレビなどが取り上げたのがブームのきっかけ。受験生らが列をなし、休日には5時間待ちの盛況ぶりだ。井戸の画像を携帯電話の待受画面にすると幸福になるという「都市伝説」も浸透。先日、電車の横に座っていた中年男性が井戸の画像を見つめていたのが印象的だった。
▼景気低迷が続くなか、開運を呼ぶ「パワースポット」への関心は高まるばかり。雑誌の特集では最も売れるテーマの一つに。そんな場所の代表格が皇居周辺。そう言われてみると、桜田門から坂下門にかけて散策していると何だか落ち着くような気がする。もっともそれが「パワー」のおかげかは分からないが。
▼かつて東北地方に勤務していた頃のお気に入りの場所が、仙台近郊にある藤原実方中将の墓所。平安期の中古三十六歌仙の一人で、小倉百人一首にも歌がある。殿上でトラブルを起こし、陸奥守に左遷され客死。西行や芭蕉が彼を偲び、陸奥に足を運んだことでも知られる。うっそうとした林の中にある墓の前に立つ度、何とも言えずほっとした気分になった。
▼土地の履歴は、そこで暮らした先人の思いも重なって、独自の文化を紡ぎ出す。そんな魅力を継承するのも、街づくりに携わる者の使命だ。













