紙上ブログ 悪徳不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽 第34回 坂口有吉
住宅新報 2010年1月12日 号 5面
入居者対応
原状回復費を踏み倒し
江戸の仇を長崎で
もう10年も前のことだが、あるアパートの引っ越し立ち会いに行くと、これ以上ない程の汚さ。部屋も玄関もトイレも、壁は子供が描いたマジックの落書きだらけで、敷居もボコボコ。障子の桟も折れていて荒らし放題。入居者に「これでは追加負担が発生しますよ」と言うと、「あ、分かってます。払います」とのこと。でも私はその入居者を信用していなかった。以前も、ちょっとしたトラブルがあった時に、その入居者の別の顔を見たことがあるからだ。悔しい思い何年も
リフォームが終わり、家主さんには減価償却分を相殺してもらい、敷金で足りない分を前入居者に請求すべく電話すると、案の定「何の話?知らねえよ、そんなの」と電話をガチャリ。再度電話すると、「うるせえな、払うわけねえだろ」と、またガチャリ。
連帯保証人である母親に電話して事情を説明したが、息子同様「そんなもん知らないわよ。息子にも払わなくていいと言っといたから」と母親も電話をガチャリ。
結局、敷金分しか取れず仕舞。「この親にしてこの子あり」であった。
その悔しさを何年も引きずっていたが、絶好の仕返しの機会がやってきた。
ある日、警察から電話があって「オタクのアパートに入居中の○○さんてどんな人?」という珍しい問い合わせ。
「その人ならとっくに退去していますが」と言うと、「あ、そう。免許証の住所がオタクのアパートのままになってたから」と言う。「どうしてですか?何かありましたか?」と聞くと、「ちょっと事故が起きましてね、この人がどんな人か知りたいと思いまして……」とのこと。
腹の中で笑いたいのを堪えて、入居中や退去時のトラブルを洗いざらいブチまけて、いかに性格異常者であるかということを伝えると、「なるほど、それで納得がいきました。やはりそういう人間でしたか」と警察官も笑っている様子。仇討ちに家主大喜び
どんな事故だったかは不明だが、その後の示談などが、そいつに不利に進んだであろうことは想像に難くない。イイ気味である。
まさに「江戸の仇を長崎で討った」格好で、家主さんに電話したら大喜びだった。不動産屋を怒らせると恐いのだ。
(坂口有吉不動産・社長)













