不動産からの景気回復(上) 容積率は「埋蔵金」 建て替え促進の切り札に
住宅新報 2010年1月12日 号 1面
昨年末、政府の新成長戦略が発表された。これはまだ基本方針のレベルで、最終とりまとめは6月ごろが目途。今後国民の声を集め「需要効果」、「雇用効果」、「知恵活用」の観点から具体化させる方針だ。同戦略では公共事業や財政を頼みとせず、また、行き過ぎた市場原理主義も取らずに、「新たな需要を創造すること」が第3の道として示されている。その柱となる分野は、環境、健康、観光の3Kだ。住宅や都市は直接には掲げられていないものの、これら3つの分野で重要なファクターになっている。住宅・不動産の観点から「需要創造」の道筋を検討する。
(遠藤
信明)需要創造への道のり
住宅の分野では、良質なストック形成が第1の課題だ。そのためには2つの方向性がある。リフォームするか、新設するかである。例えば、耐震性が不十分な住宅を耐震改修するか、新たに耐震性の高い住宅をつくるかという選択肢がある。
需要効果、雇用効果としては、もちろん新設するほうが効果が高い。「公共事業」の減少で苦況にあえぐ建設会社にとっても、新設需要が多い方が、経営面でも雇用面でもよいはずで、「民間」の新設住宅需要が日本経済の成長に大きく寄与する。
新設住宅着工の落ち込みが続いているが、環境や健康に配慮した便利で安全で広くて安く新しい住宅には、常に国民のニーズがある。これから良質なストックを形成するとしても、現在の既存住宅をリフォームするだけでは、こうした国民を豊かにするニーズに応えきれないだろう。優良なストックとなる住宅を新設しながら、そのうえでリフォーム市場・流通市場を整備していくという2つの方向が、日本の経済成長にとって重要だ。新設増加5つのツボ
現在の新設住宅着工の落ち込みを、どう回復したらよいのだろうか。財政出動なしに、需要・雇用効果が高い新設住宅着工を伸ばしたい、ここが「知恵」のしぼりどころとなる。
5つのキーワードとして(1)金融支援(2)規制緩和(3)減税(4)人口増加策(5)国際化--が挙げられる。
金融支援は、需要者側に安い金利で住宅取得資金を供給することが第一だが、住宅金融支援機構の金利優遇措置が既に決まっており、住宅エコポイントよりも効果が大きいのではないかと期待が高い。
金融緩和策として、不動産事業者に対する積極融資が望まれる。マンション需要があってもディベロッパーに仕入れのための資金が回らないと新設はできない。
馬淵国交副大臣は、不動産業界の新年会で、金融緩和の重要性を声高に訴え、「国交省は直接の担当ではないが、政府の一員として不動産に対する金融緩和の実施を実現したい」と強調した。
不動産に対する金融緩和は、デフレ克服にも有効であり、今後一層の拡充が期待されるこころだ。財政難には規制緩和を
需要喚起の2つめの視点として、財政出動なしに新設需要を刺激するには「規制緩和」も有効である。
特に、容積率の緩和が新設需要を喚起する効果が高いと見られる。マンションの建て替えを例に容積率の緩和策を検討してみよう。
耐震性に問題があるような古いマンションの建て替えが進まない背景には、建て替え資金の調達がうまくできないという問題がある。
この問題について、あるディベロッパーの社長は、「建て替え時に容積率のボーナス制度を設ければ、増えた床の売却益を活用することで資金が苦しくても建て替えの企画を提案することができる」と容積率の緩和措置に期待をふくらませている。
旧耐震のマンションは106万戸あるとされる。これを環境に配慮した良質なストックに建て替えるときに、例えば容積を20%分だけ政策的に支援してはどうか。5階建てが6階建てになり、1フロア分の余裕資金が生まれる。この程度なら周辺の環境にそれほど悪影響があるとは思えない。
これで建て替えが進み、国民にとって安全で良質なストックが形成され、しかも財政は全く痛まない。
こうした規制緩和には税金がかからないので、隠れた「埋蔵金」ともいえるだろう。容積率制度を上手に活用することで、新設着工の需要を喚起することができるはずだ。
(つづく)













