「仲介」は不動産業の期限 この道30年余のベテランが語る原点とは
住宅新報 2010年1月5日 号 16面
「不動産業の原点」とも言われるのが「仲介業」。売買でも賃貸でも、不動産は「縁なもの」。縁があってこそ取引が成り立つ。仲介業はその「仲立ち」「仲人役」を務めるという考え方だ。「仲介」という言葉自体が、そうした不動産業の成り立ちを表しているのかもしれない。その「仲介業の原点」とは。不動産流通の近代化が進んで、全国を結ぶ流通機構・市場が整備される一方で、ドライには割り切れない、仲介業の特性とは何か。◆開発から仲介に転身
この仲介分野でのキャリアは30年以上。現在、流通大手と中堅どころの経営幹部でもあるベテラン2人の話を総合して、「原点」を探ってみた。ともに、不動産業界へは開発・ディベロップメントの仕事を目指して入ったが、ほどなく、今後の成長分野とされた中古流通に転身した。大手・中堅系の現場と経営企画担当として、近代化の進展の第一線で仕事をしてきた。30年で変わったことと、変わらないものなどを探った。◆仲立ち、仲人役として
不動産は一つひとつ異なり、2つとして同じものはない。売りたい、買いたいという人、それぞれに気に入ってもらって初めて取引が成立する、「ご縁」なもの。縁と縁をつなぎ合わせる仲立ち、仲人役を務めるのが仲介業者であり、不動産業だと思う。買う方はともかく、売る方は何らかの事情があってのことで、人に知られたくない理由である場合が多い。そうした事情を勘案して、仲介業は事に当たるわけだ。そうした仕事が来るのも巡り合わせであり、縁である。言葉を替えると、仲介業の信用かもしれない。
「気持ちよく売っていただいて、気持ちよく買っていただく」こと。売主には物件に対する思い入れがある。「値段ではなく、大事に使ってもらえる人を」。金融商品とは違う、不動産独特の「縁」が支配する場合もある。広大な土地のある米国とは違って、先祖伝来、代々引き継がれた土地や住宅が売られる事情を察して業務を遂行する。ドライに割り切らない仕事が実は、仲介業の伝統なのかもしれない。◆仲介業の醍醐味は
翻って今日に当てはめるとどうなるか。社内報で「お客様の感謝の言葉」を紹介している。「御社のおかげで売却できて喜んでいます」などの声だが、やはり仲介の仕事の醍醐味は「お客様の笑顔が一番」。これは過去も現在も未来も変わらないだろう。
「どういう事情で売るのか」と「何を求めて買うのか」。需要者のニーズを把握することが最も大事だ。今後、高齢者が関係する物件の売買が増えるのは確実だし、経済情勢を反映して厳しい選択の中での売却も増えてくる。そうした事情に想像力が働く対応が求められてくるだろう。
そして、買い手に対しては、中古住宅であっても従来の「住むための器」ではなく、「こういう生活ができる」といった付加価値をつけなければならない。値段勝負に陥らないよう、注意が必要だ。◆流通市場を動かすもの
30年、不動産仲介・流通業と関わってみて、流通機構などの制度は整備されたが、本質は変わっていないように思う。市場は実需だけではなく、一定割合で仮需・投資需要を包括しながら動いている。買い取り転売もあるし、融資・抵当流れなども含まれる。最近はとくに、仮需の比率が高まっているようで、需給関係が読みづらい。
また、「どの企業も似たり寄ったり」で、他社と似た戦略をとる傾向が強いこと。規模の大きいところが一斉に似た戦略でくると、店舗、営業マンの数、サービス内容、知名度の点で中小は敵わない。どこに活路を見いだすか、これは永遠のテーマかもしれない。
これまで経済成長、個人所得の伸びで、流通市場全体が大きくなってきたが、数年来の不況は従来型では活性化が難しくなったことを教えている。顧客に接する入り口は同じでも、中身の違いが問われるときだと思う。それは取り扱い種目の多様さとコンサルティング能力だ。開発や投資会社とは違う、多様な顧客に対応できる物件をいかに取り揃えることができるか、それが「仲介業の原点」だと思う。◆人材の総合力磨く
仲介業の場合、取り扱う物件は土地、戸建て、マンション、アパート、ビル・店舗まで幅広く、賃貸もあれば、売買でマイホームの一次取得、買い替え、さらに投資需要まで様々な需要がある。それも貸し手、借り手、売り手、買い手とバラエティの多さは不動産業でもピカ一だ。もちろん、1人ですべてをこなすのは難しいが、地域に精通したプロになるには、各分野とも一定レベル以上の知識と経験が求められてくる。
開発・分譲業の仕事は分業が進んでいるが、仲介業は案件ごとに物件調査から価格交渉、成約・引き渡しまで一貫して業務をこなす形が一般的だ。このため、不動産に関する業務知識やものの見方などの総合力が備わってくる。人材を中途採用する場合など、開発や建築など各分野で育った人たちと比べると、不動産の即戦力として注目されるケースが多いのだという。
業務の性格とはいえ、売り手、買い手の間に立ち、それぞれの要望に対応しながら取引をまとめる仕事は、必然的に不動産に関する知識、対応を含めた総合力を磨き、人材を育てることになる。その意味でも、「仲介は不動産業の原点」と言えるだろう。













