トップインタビュー 常日頃(25) 市川不動産社長 市川 廣利氏 言うべきことは言う
住宅新報 2010年1月5日 号 7面
『信頼』があればつぶれない
23回目の転職で初めて不動産業界に身を置いたのが64(昭和39)年。5年後の69年に埼玉県蕨市で市川不動産を創業した。以来「誠心」の2文字を社是としてきた。「自分ならしてほしいと思うことを、お客様にして差し上げる」--それがすべてだと社員に話す。「顧客第一」の志向は、レインズ改革など業界改善に向けた数々の提案にもつながっていく。79年頃には売買から賃貸仲介・アパート管理に業務の中心を移した。「あと5年で一線を退き、女房孝行がしたい」という市川廣利社長に地元不動産業の心得を聞いた。
--業者間情報システムのレインズ改革案が改めて注目されているようですね。
「レインズは大手・中小との共同仲介促進のためにつくられたが、十分有効に機能しているとは言い難い。そこでレインズの一般公開と登録義務化を主張してきた。具体的には業者は仲介依頼を受けたら全てレインズに登録し、登録証明がなければ手付金をもらえないようにする。契約が成立したら成約登録をし、登録抹消証明がなければ残金や手数料を受け取れなくする。そのように宅建業法を改正すれば全ての物件がレインズに登録されることになり、それを一般公開すれば、いろいろな広告媒体に載せなくても済むので経費削減になる」
--ネット社会ですから、ネットの有効活用を促進し流通コストを下げ顧客に還元すべきですよね。
「そうだと思う。昔、我々が住通(現ERA)で米国の流通業界を視察してから30年が経過した。いずれ日本も米国のエスクロー制度導入を検討することになると思うが、もっと早くレインズと一緒に導入すべきだった。どうせ米国のマネをするなら明治維新のように何もかもいっぺんに真似した方が(笑)、しっかりした制度になったのではないか」
--エスクローを導入する効果は。
「不動産取引のトラブルが減るから全宅連保証協会の供託金、約650億円をもっと有効に業界発展のために使うことができる。レインズに成約登録をしたら契約書をエスクロー会社(日本型不動産取引保証保険会社)に持ち込む。そこで過剰ローンや不正取引があれば取引を中止し、エスクロー会社が直接買主に手付金を返還する。問題がなく、物的、法的チェックが済み残金の決済が終われば、米国のように売主から売買代金の6-7%の手数料を受領し仲介業者に支払う。瑕疵担保保証保険や取引主任者保険なども新築・中古を問わず、この取引保証保険に一本化すればコストが軽減できる」
--トラブルを未然に防止することで保証協会の供託金を浮かすことができれば紛争処理という後ろ向きではなく、前向きに活用することができそうですね。
「高齢者が安心して暮らせる終の住家を取得するためのモーゲージ(物件担保)ローンに活用してもいいし、融資に際し連帯保証人をとらない中小不動産会社向けの金融機関をつくってもいいのではないか」
--中小不動産会社はこの不況を乗り切れますか。
「確かに業績は悪化しているが、地域の不動産業者は信頼で勝負しているかぎりつぶれることはない。創業のとき、世話になった不動産会社の社長から『誠心』と書かれた額をもらった。その人は『不動産は言葉を実らす心、つまり誠心が大切だ』と教えてくれた。頼まれたことを依頼者の身になって一つひとつ着実に誠心誠意実行すること、それしかない」
--不動産業がなかなか信頼産業になりきれないのはなぜですか。
「例えば、昨年は賃貸業界が話題になった。家賃滞納保証、礼金・更新料紛争、家主からの不正リベート問題などゴタゴタしている。その根っこに仲介手数料の低さがあるのなら、正々堂々と業法改正を要求すべきだ。主張すべきことを主張せず、都合が悪いことは口をぬぐってしまう風潮があるかぎり、ユーザーの信頼は得られない」
--空室を埋めるために仲介業者に広告費を出すということが業界ではなかば常識化しているようですが、どう思いますか。
「わが社はそうしたものを当然のように家主に要求したことはない。空室を埋めてほしいという家主の依頼に、誠心誠意応えようという気持ちがあれば、物件が決まらない理由を真剣に考える。物件の掃除をしながら常に考えていると、物件の短所も長所も見えてくる。そうすると、本当に不思議だが成約できるようになる」
--物件に営業マンの魂が吹き込まれるのでしょうか。
「そこまで大袈裟なものではない(笑)。ただ、短所も長所としてアピールできる能力が身に付くということではないか」
--一線を退いたら、何をしますか。
「ところてん屋、家庭教師、ホテルマンなど22の仕事を経験したあと、天職と感じる不動産業界に入った。30歳だった。それから40年、実務だけでなく東日本レインズの広報研修委員会に8年間所属する機会にも恵まれ、様々な提案もしてきた。あとは欧州旅行など、カミさんとの約束を果たすのが楽しみだ」
(聞き手・本多
信博)<会社概要>本店所在地=埼玉県蕨市塚越2-3-11谷島ビル1階電話=048(441)4754社員数=17人支店=鳩ケ谷













