よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第87回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く 東京海上不動産投資顧問社長 植松 丘氏
住宅新報 2010年1月5日 号 3面
「有識者に聞く」シリーズの16回目は、東京海上不動産投資顧問の植松丘社長に不動産投資市場の動向や今後の見通しについて話を伺います。植松社長は日本の不動産投資市場を切り開いた方の一人であり、前職の野村不動産専務での活躍を含め、その優れた分析力、先見力、実行力は市場でも高く評価されています。また、政策研究大学院大学の政策研究科客員教授、不動産学会常務理事などとして、学会でも活躍しています。「金融市場からの揺さぶり
どう乗り越えるかがカギ」(田辺)
一昨年の秋以降の金融危機は、日本の不動産投資市場に大きな影響を与えることになりました。(植松氏)
サブプライムローン問題が騒がれ始めた07年頃は、これは主として欧米の問題であり、日本の金融経済に及ぼす影響は限定的だという見方が主流であったように思います。ましてや、米国のサブプライムローン問題が日本の不動産投資市場を直撃するというようなことを言っていた人は、ほとんどいませんでした。
しかし、不動産の証券化が進むということは、不動産市場が金融市場の影響を強く受けるようになることだということを、今回の金融危機は端的に示していると言えるでしょう。このことは、亡くなられた野村不動産の中野淳一社長(当時)が、既に95年頃、「これからの不動産市場は金融市場からの揺さぶりをどう乗り越えるかが鍵だ」とおっしゃっていたことで、それが現実のものとなりました。
日本の不動産証券化は、不動産会社が中心になって進めてきたため、株・債券以外の新しい投資機会の投資家への提供という資本市場の要請よりも、日本の不動産市場への間接金融以外の新たな資金パイプの提供としての面が強かったように思います。
その意味では、日本の不動産証券化市場は初めて金融商品市場の一員としての真価が問われているということができると思います。(田辺)
金融危機の数年前から不動産価格が急上昇し、ミニバブルではないかという意見もありました。(植松氏)
ミニバブルという表現が適切であるとは思いませんが、普通の不動産市場関係者は、キャップレートの急激な低下を見て、05年頃から「何かおかしい」という印象を持ち、しばらく様子見をしていた時期があります。90年前後のバブルの時と違い、収益重視の投資スタイルになっていたので、利回りの壁によって調整局面が訪れるのは近いと見ていたのです。
ところが、実際には利回りの壁を突き抜けてしまいました。その大きな役割を果たしたのがCMBSだと思います。CMBSの登場によって、日本の不動産に対する投資のスタイルは、不動産リスクを取ることからレバレッジのリスクを取ることに大きく変わってしまいました。不動産投資ビジネスが、不動産リスクを取るビジネススタイルから金融リスクを取るビジネススタイルに変わったという方が適切かもしれません。
これが金融市場からの「揺さぶり」なのですが、不動産ブームのときにストップをかけることが、より難しくなりました。不動産市場が金融市場の論理で動いている以上、傍観者でいることは市場からの退場を意味するからです。(田辺)
90年前後のバブル崩壊と今回の金融危機を比較して、何か相違点はありますか。(植松氏)
歴史的に見て、世界経済というものは必ず好況の国と不況の国とがあって、それでうまく回ってきたように思います。ブラックマンデーのときは、欧米を日本が支えたし、90年前後のバブルのときは日本を欧米が支えた。ところが、今回は世界中が悪い。中国など一部に回復が早い国があるが、グローバル金融におけるウエートが高い国ほど状況は良くない。これがまず大きな違いでしょう。世界の金融秩序が壊れてしまっている。ですから、証券化でグローバル金融に組み込まれた日本の不動産市場は、90年前後のバブル崩壊時より厳しい状況です。
新しいグローバル金融の秩序が少しずつ見え始めていますが、その中での不動産金融の位置づけを早く見つけて対応する必要があるでしょう。
(つづく)













