キーマンに聞く 鑑定業の新しい役割(1) 変化を大きなチャンスに
住宅新報 2010年1月5日 号 2面
不動産鑑定評価を取り巻く環境が大きく変わりつつある。不動産証券化の進展に伴い、高度で複雑な業務がある一方、不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価ほどの精度を問わない価格調査などの需要も増えている。依頼者側の依頼目的やコスト意識などを反映して多様化の様相を見せている。これに対応するため、国土審議会不動産鑑定評価部会報告書と価格等調査ガイドラインを受けて日本不動産鑑定協会が定めた実務・業務指針が1月、施行された。鑑定評価制度を巡る動きや対応をキーマンに聞いた。1回目は国土審議会不動産鑑定評価部会部会長代理の明海大学不動産学部教授・前川俊一氏。◆第三者評価の必要性
--鑑定評価の役割はどう変化したのでしょうか。
「土地神話が崩壊して90年代後半から不動産の証券化が進展し日本の不動産金融の形態が大きく変化し、2001年にはJ-REITが誕生して私募ファンドとともに発展してきました。サブプライムローンに端を発した世界金融危機が不動産金融そして市場に大きなダメージを与えているとはいえ、不動産金融の形態が元に戻ることはありません」
「J-REITとプライベイト・ファンドの取引にはスポンサー会社など同属間の取引が多く利益相反問題から第三者の評価が必要とされ、またJ-REITは毎期期末資産価格の公示を要求されており、鑑定評価が証券化の中で重要な役割を担っています」◆会計基準改正とCRE
--会計基準の改正やCRE(企業不動産)戦略とも関わってきます。
「一般の企業でもCRE戦略が重要視される中で不動産の活用と評価が重要になるとともに、会計基準の改正で固定資産の評価に減損会計が適用され、IFRS(国際財務報告基準)により投資用不動産の時価評価または注記での時価表示が課題になってきました。これらのことから企業は保有不動産の評価を適切に行う方向に動いていており、鑑定評価が果たすべき役割が大きくなっています」
「とはいえ鑑定評価の仕事は容易ではありません。不動産は異質財(完全に差別化された財)であり市場が限定されやすく不完全になりがちです。また十分な情報が流通しておらず市場価格の判定は難しいのが現状です。特に取引も少なく市場が十分に機能していない不動産市場では誰と誰が取引するかによって取引価格が異なり、市場価格はむしろある価格帯としてしか表現できない状況もあります」
--鑑定評価はますます難しくなる方向ですか。
「正解のない市場価格を評価することは難しいことは確かですが、依頼者は一つの答えを求めるだけでなく、判断プロセスにも着目し学ぼうとしています。専門家として適切な意見を述べることが重要でありそれができなければ社会の信頼は得られません」◆技術向上と連携も
「市場分析および価格分析のための技術を向上させ、市場分析を適切に行えるように多くの情報を収集することによって初めて専門家として適切な意見を述べることが可能となります。個々の鑑定士が日々研鑽を重ねることはもちろん必要ですが、そのための研修の機会を得ることあるいは他の鑑定士と業務を提携して共同して行うことも重要であります」
「鑑定評価業界にとって現在の状況の変化は大きなビジネスチャンスである一方、鑑定評価の存在意義が問われる場面でもあります。不動産鑑定士の専門家としての地位を高めるためにも頑張っていかなければなりません」※まえかわ・しゅんいち=99年から現職。公職は国土審議会土地政策分科会特別委員、同企画部会委員、同不動産鑑定評価部会委員(部会長代理)など。専門は公共経済学、不動産経済学。













