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スタンダード会員限定郊外団地 「再生」の序章(下)

住宅新報 2009年12月22日 号 1面

 高度経済成長期をピークに各地で建設されたニュータウンなどの郊外団地は、その多くが築30年を超えた。水回りをはじめとする住宅設備の劣化やバルコニー部分の爆裂など躯体の老朽化も目に付く。しかし、郊外団地の将来像を考えるうえで最大の課題は、居住者の高齢化への対応だ。

 国立社会保障・人口問題研究所の日本の市町村別将来推計人口統計(08年12月推計)によると、四半世紀後の2035年には、65歳以上の人口割合が40%以上の自治体が全国の4割を超える。更に、全国市町村の半数超が、75歳以上の人口割合が25%以上となると試算されている。殊に郊外部の高齢化の進行は顕著だ。

 こうした状況に対応して、国土交通省は5月、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」を改正。高齢者が暮らしやすい賃貸住宅供給などを主眼に、福祉との連携や高齢者専用賃貸住宅(高専賃)、高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)などの高齢者向け支援住宅、高齢者居住安定化モデル事業の充実を打ち出した。

 一方、民間レベルでも、深刻化する「孤独死」に対し、自治会などが主体となり、見回り相談員設置や「予防センター」設立などで対応している。「資金面に不安」

 進まぬ建替え機運

 しかし、躯体そのものの抜本的再生ともいえる「建て替え」の動きは、ほとんどない。とりわけ高齢者の比率の高い大型集合住宅では、建て替えの機運が盛り上がっても、資金難などで断念する例がほとんどだ。

 09年4月に国土交通省が公表した「08年度マンション総合調査」でも、「建て替えの検討状況」において「具体的に検討している」とした管理組合は0.5%、「検討しているが問題があり進んでいない」が1.4%であるのに対し、「全く検討していない」が65.7%となっている。

 東京都下の築30年超の大規模住宅地。団地内ボランティア活動の一環として草取りをしていた70歳代の男性に、建て替えへの意向を聞いた。

 「今更、建て替えと言われてもね。何年も仮住まいしなくてはならないし、金銭面の不安もある。何よりも今の暮らしで満足している」

 今後、郊外の集合住宅の「建て替え」はどのように動いていくのか。IAO竹田設計執行役員東京事務所副所長の原雅彦氏は次のように指摘する。

 「例えば、管理組合主導の自主再建によるマンション建て替えは、再建まで長い年月を要することがネックとなり、困難。現実的には比較的短期間にマンション再生が可能となるスケルトンリフォームが主流となっていくのではないか」

 一方で原氏は、自身の阪神・淡路大震災の被災経験を通じて、「建て替え」が不可欠となった集合住宅支援を行う視点から、今後の公的補助の充実が一層重要になってくると見る。

 「居住者が抱く最大の不安は金銭面。公的な補助と共に、居住者の金銭面での不安を払拭(ふっしょく)する意味で、居住者が気軽にライフプランを相談できるような仕組み作りが必要」としたうえで、ファイナンシャルプランナーの業務拡大にも期待を寄せる。

 一方で、ソフト面の展開では、老後の生活や働く女性の子育てを支援するため、福祉サービスをはじめ居住関連施設の充実や就業機会創出が必要となってくる。またハード面では、都市再生機構がひばりが丘団地(東京・東久留米市)で住棟単位での改修技術開発によるストック再生実証実験を実施。エレベータ-のない階段室型住棟の有効活用を主眼に、解体予定の3棟にバリアフリー化や外付け廊下の設置などを行い、ストック再生の実証的研究を行っている。

 こうした取り組みは少しずつ、再生ノウハウの向上につながりつつある。

 

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 集合住宅の原点は「同潤会」--。集合住宅再生を考える上で、同潤会アパートメントの意義が改めて見直されている。

 同潤会は、1923年の関東大震災後、その義捐金を元に当時の内務省が設立した財団。東京と横浜計16カ所に鉄筋コンクリート造りのアパートメントが作られた。90年代後半、保存運動が相次いで持ち上がったものの、経済性などの要因により、そのほとんどが建て替えられた。09年秋に三ノ輪アパート(荒川区、28年完工)が姿を消し、残る「同潤会」は上野下アパート(台東区、29年)のみとなった。

 竣工当時「東洋一」と称された江戸川アパート(新宿区、34年完工)で生まれ育った女優の坪内ミキ子さんは、「隣同士のコミュニティもよく、広い中庭がアパート全体を包んでいた。建物の老朽化に伴う住みにくさもあったが、戸建て住宅に住んでいるような落ち着いた雰囲気もあった」と話す。地域に求められるマネジメント能力

 魅力的な再生手法とは。明海大学不動産学部の齊藤広子教授は、欧米での郊外住宅再生の事例を元に、「地域自身が経営力を付け、持続的なマネジメントを行う開発手法が求められてくるし、そのうえでも中古流通市場との連携が重要。空き家の活用などを含めた総合的視点が求められる」と分析する。

 100年以上前、イギリスの都市計画家・エベネザー・ハワードが構想した「田園都市構想」は、やがて海を渡り、形を変えながらも、日本のニュータウン構想へとつながっていった。

 長い歳月を経て育まれた地域の個性、多くの居住者の多様な意向を汲み取ったコミュニティと連携、そして住民自身の自立性、団地を含めた街全体の「思い」を次代につないでいく継続性--。こうした一つひとつの課題に丁寧に取り組むことこそが、郊外団地の新たな魅力となり、新たな居住者をも掘り起こしていくことにもつながる。

 「住民参加」から「住民主体」へ。郊外団地再生は、その街自体の住民力にかかっている。

 (吉岡

 達也)

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