知って得する建物の豆知識(26) EXP・J ひび割れ、変形防ぐ機構
住宅新報 2009年12月15日 号 4面
「エキスパンションジョイント」のことを、図面上ではEXP・Jなどと表記します。エキスパンションとは膨張や拡大という意味で、一般には熱膨張による破壊を避けるためのクリアランスのことを指していますが、大規模建築物の場合は構造的な逃げとしてEXP・Jを設けています。L型やZ型など矩形ではない建築物で、マンションなど規模の大きな建築物のほか、平面形状は矩形であっても長さが50-70メートルを超えるような建築物には、コンクリートのひび割れなどを防ぐために必須の機構です。
形が整形ではない建築物では重心が偏っており、強い風が当たった時や地震時には揺れが偏り、L型やZ型のコーナー部に大きな力が加わるため、場合によっては破壊が発生します。これを避けるために複雑な形状の建築物をできるだけ矩形に近い形に分割するのが、エキスパンションジョイント(以下EXP・J)です。
EXP・Jのクリアランスは建物の規模にもよりますが、通常は100-150ミリ程度、免震構造の建築物では分割された建築物の最大揺れの合計になるため、500ミリにも及びます。
ジョイント部の形式には渡り板を設けたような「すべり型」やアコーディオンのような「じゃばら型」など様々な形式がありますが、重要なことは雨水などの処理です。可動部分があるEXP・Jで「雨閉じ」を完全に行うのは容易ではなく、雨漏れの原因になることが少なくありません。しかし、最近ではEXP・J専業メーカーも増え、三次元EXP・Jも既製品として販売されるなど、熟成した建築技術になっています。
ところで、今まで述べたような条件では必ずEXP・Jが必要かというと、必ずしもそうではありません。特に、意匠重視の設計では一体的なデザインを特徴とするケースが多く、接合部が目立つEXP・Jがネックになることが少なくありません。構造的な変形を抑える設計ができれば、EXP・Jは不要です。具体的には建築物の変形と剛性を基に変形予測を行い、これを構造計画全般に盛り込むことで可能になりますが、複雑な計算が必要になります。
EXP・Jのような「クリアランス=逃げ」の考え方は、構造躯体だけではなく建築の様々なエレメントにも用いられています。例えば、中高層に使われるカーテンウォールなどのガラスサッシです。
以前はガラスとサッシ枠の間にあるクリアランスを埋めるために硬化性シーリング材を使っていましたが、この材料は施工後硬化するため、地震時の揺れに追従できず、ガラスを破壊してしまいました。ガラスとサッシは風圧や揺れを受けても接触して応力を伝えないように設計する必要があります。
例えば1800ミリ×1800ミリ程度のガラス面を持つサッシの場合で層間変形角150分の1と仮定すると変形量は15ミリ程度になり、サッシのクリアランスは約4ミリになります。サッシの全周にこのクリアランスを確保し、弾性シーリングを施せば、サッシが大きな揺れを受けてもガラスを破壊することがありません。(建築家・中村
義平二)













