郊外団地 「再生」の序章(上)
住宅新報 2009年12月15日 号 1面
急速な高齢化に伴う人口減少、住宅の供給過剰などにより、多くの分譲・賃貸団地が曲がり角にきている。とりわけ、都心通勤のベッドタウンとして日本の高度経済成長を支えてきた首都圏の郊外団地では、躯体の老朽化に加え空き家の増大、孤独死の問題など、住環境の課題が顕在化してきている。更に、ここ数年の景気低迷に伴い、「建て替え」の動きもほとんど進んでいない実態もある。そんな中、団地及びその周辺地域で、住環境向上を目指す新たな動きも出てきた。郊外団地の将来像は--。「再生」に向けた取り組みを追った。
(吉岡
達也)広大な敷地をメリットに
脚光浴びる「棟別再生」
12月4日、東京都内で開かれたシンポジウム「マンションの新たな課題・新たな挑戦」(日本マンション学会、住宅金融支援機構主催)では、マンション居住を取り巻く最新のテーマが紹介された。
中でも注目を集めたのは、分譲マンションの維持管理・再生に関し、管理組合などの支援を目的に国土交通省が09年度にスタートした「マンション等安心居住推進事業」の採択事業の紹介。同事業には管理組合など76団体が応募し、36団体が採択された。
シンポジウムでは、「団地型タイプ」で採択された千葉市花見川区・西小中台団地の取り組みに高い関心が寄せられた。千葉大の支援受け「新方式」を採用
西小中台団地は72-73年に日本住宅公団が分譲した、総戸数990戸・37棟の郊外団地。躯体の老朽化に伴い、一括建て替えを模索していたが、景気悪化などの影響で断念。「建て替え」の方針を02年から「団地再生」へと転換。管理組合では、千葉大学の支援を受けながら、新たに「棟別再生」を目指してきた。
棟別再生とは、主に分譲住宅において、棟ごとに建て替え・改修・修繕を選ぶ団地再生手法。各棟の居住者のニーズに応じて居住する棟を交換する「住戸交換」が、同手法のポイントの一つとなっており、住民の多様な目的に応える方式として注目されている。とりわけ、敷地面積に余裕のある郊外団地で、棟別再生の有効性が指摘されている。
団地管理組合法人西小中台住宅管理組合理事の浜岡紀子さんは、「無理をせず、コツコツと準備を進めていったこと、見学会などを積極的に実施しながら準備を進めてきたことが、マンション等安心居住推進事業の採択にもつながっている」と話す。
今後は棟別再生のルールや「将来ビジョン」の策定、子育て世帯の新規居住推進に向けたPR計画策定などに力を入れていきたいと期待を膨らます。
千葉大学工学部都市環境システム学科の小林秀樹教授は、「棟別再生に生活サービスを導入した『総合的再生』については、建て替え希望者だけでなく、現状の暮らしを維持したい区分所有者にも安心できるようなビジョンが必要。再生推進には、高齢者などに〓取り残され感〓を持たれないように、居住者主体による福祉サービスが不可欠」と述べた。
団地再生を実施する居住者の選択の幅を広げると共に、持続可能な地域社会を生み出していくため、若い世代が同じ住戸に住む「シェア居住」など、多様な世代を混在させることが、団地及び周辺地域の活性化にもつながると指摘する。
また、団地再生については、「転がし型再生」も新たな手法の一つだ。郊外の分譲団地内の空き地を活用。1棟で建て替え決議が採択されると、当該空き地に新設棟を建設し、建て替え希望者が転居するというものだ。居住者には引っ越しが1回で済むというメリットもある。「高齢者居住」に郊外団地は魅力的
これからの郊外団地暮らしのメリットとは何か。小林教授は、「定年後、通勤が無くなれば、駅に近くなくてもそれほど不都合は感じなくなるし、ほとんどの団地ではバス交通網が充実している。また郊外団地は、一般的に緑も多く、歩いて暮らすには良好な住環境というメリットもある。安心して老後を送ることができるという意味で、郊外団地は高齢社会にとって新たな可能性がある」という。
一方で、郊外団地再生にあたっては、地元自治体をはじめ、各種コミュニティ団体、NPO、仲介業者、住宅情報メディアなどのバックアップも重要となる。郊外団地活性化のための、新規居住者確保を目指す仕掛け作りも課題だ。
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「建て替え」から「再生」へ。こうした声は様々な方向から共通して聞こえてくる。
高層住宅管理業協会の黒住昌昭理事長はこう指摘する。
「マンション管理という観点からみても、多くの既存マンションの躯体はしっかりしており、維持・管理が適切になされていれば、『長く住む』ことは十分に可能だ。とするならば、既存ストックの活用ということからも、建て替え以上にリフォームをはじめとするマンション再生が今後、より重要になってくるはずであり、地域コミュニティの持続性という観点からも大きな意味を持つ」。
馬淵澄夫・国土交通副大臣は、「団地再生は、高齢者も若い人も地域が一体になって進めていくことが不可欠。住宅基本法の理念に立ち返りながら、単にハード面だけを考えるのではなく、ソフト面を重視しながら『住まう』ことに理念を持って取り組んでいくことが必要」と話す。馬淵氏自身も奈良県・鶴舞団地で育ち、これまで郊外団地の諸課題に向き合ってきた。
「高齢化が進む中で、いまや既存ストックの整備は政策面においても最重要課題。リフォームなどに関する社会資本整備は急務」とその必要性を強調する。
「郊外団地再生」は、日本の住環境の命運をも握っているともいえる。













