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スタンダード会員限定中古ワンルーム販売・管理の「日本財託」 「入居率」追い続け20年 会社の「使命」、全社員に浸透

住宅新報 2009年12月1日 号 12面

 10月で設立20年目を迎えた投資用中古ワンルーム販売・管理の日本財託グループ(東京都新宿区、重吉勉代表)は、厳しい市場環境下でも順調に業績を伸ばしている。高いレベルでの入居率確保を会社の生命線ととらえ、それを真剣に受け止め行動する社員一人ひとりの力の集まりが、会社全体を支えている状況だ。ただ、これまでの道のりは決して順調だったわけではない。事の重大さに気付き、その変革のために真摯(し)な姿勢で取り組みを進めた重吉代表の姿がそこにはあった。(福島

 康二)

 10月末時点の累計オーナー数は3003人、管理戸数7326戸。この半年間で、オーナー数は294人、管理戸数は704戸増加した。売り上げ規模も順調に拡大しており、07年(9月決算)の64億円から08年は80億円、09年は97億円。順調な業績拡大の理由について重吉代表は、「入居率への強いこだわり」を挙げている。

 直近の平均入居率は97.31%。目標の98%をやや下回っているものの、高い数字を確保している。物件を投資家(オーナー)に紹介する際、この数字は非常に重要な意味を持つ。安定的な賃貸経営ができるかどうかの判断基準になるからだ。売ることが目的ではなく、その後の安定的な経営をしっかりサポートしている証として提示している。唯一の目標数字

 同社では、中長期的な数字上の業績計画は立てていない。「仮にインフレとなり利回りが下がるような状況になれば、会社の方針として販売は休むことにしている」という。例えば09年9月期の97億円のうち、販売事業の売り上げは88億円。それがゼロになっても構わないと考えるのは、「オーナーの利益にならないことはしない」からだという。その代わりに仲介事業や管理受託にシフトする考えだが、そのような方針の中、唯一と言っていい数字上の目標が「入居率98%」だ。

 同社は、入居後の管理、アフターサービスは行っているが、賃貸の客付けはしていない。地域の賃貸仲介会社頼みということになるが、優先的に入居者を紹介してもらえるよう「ポイント特典」など独自のシステムを構築している。提携会社は2600社以上だ。

 また、社内体制についても、社員の6割にあたる60人を賃貸管理部門に充てている。アフターの充実で、入居率を継続的に確保しようという狙いだ。社員には「全員コンシェルジュ化」を促しており、『おもてなしの精神』による入居者やオーナーへの対応を徹底している。週1回の電話応対研修や「ロール・プレーイング大会」の実施など、教育体制にも力を注ぐ。全社員が数字を意識

 更に同社には、社員一人ひとりが「98%」という数字に強い意識を持っている強みがある。それが形となって表れたのが、今年の夏に「空室対策プロジェクトチーム」を発足した時だ。

 管理物件の中に、空室が長期化しているものが出始めていた。そこで、賃貸仲介会社への訪問を積極化して、より多くの入居者を紹介してもらおうと特別体制を敷いたものだが、営業部だけでは数が足りないため全社的な取り組みとした。「強制ではなく、あくまで任意参加。参加の有無によってインセンティブやペナルティーが生じるものではない。当社のそういう社風は、社員全員が分かっている」(重吉代表)。結果、参加を希望した社員は半分近くの46人。経理部、契約部といった部署からの参加もあった。「正直、こんなに多いとは思わなかった」と重吉代表は驚くが、普段マーケティングを担当している参加社員の1人は、「当社の入居率の高さに期待して、物件を購入したオーナーの信頼を裏切るわけにはいかない。入居率が生命線であることは全社員が強く思っている。また、普段あんなに頑張っている人、経理部のあの女の子も参加するのだから私も、という気持ちもあった」と話す。低い滞納率を維持

 会社が最も重視している「入居率」に対して、どの社員も他人事と思わず、自分たちの問題だと認識できているという。毎月実施している家賃滞納者への督促電話も、全社員で取り組む。「これは強制参加。滞納督促は管理業の中でも非常に辛い仕事。でも、それを皆に感じて、大切さを分かってほしい」(重吉代表)。初期対応を迅速に行っているため、1カ月以上の滞納者は、管理している7300戸以上の中で6-7件、0.001%程度の範囲だ。

 重吉代表は、「取引先から、『御社の社員は、会社が好きだ、仕事が好きだと臆面もなく言う人が多い』と笑われる」と嬉しそうに話す。その重吉代表も、「売り上げや利益はもちろん、お客様よりも社員の方が大切」と臆面もなく話す。「感謝の気持ちを忘れずに、謙虚な姿勢で愚直にまめまめしく仕事をする。これだけで十分。ほかは何もいらない。会社はそのフィールドを用意さえすればよい」

 「まだまだ私は社長(代表)として20点」と謙遜するが、それが80点、90点になった時期--、この会社はどのような姿になっているのか楽しみだ。問題点は社員の声に

 =真摯に傾聴する重要性=

 順調な成長路線を歩んでいるかに見える同社だが、4年前は全く違う様相を呈していた。

 高い営業力で、重吉代表自ら会社の売り上げの多くを稼いでいた時期。社内組織は外部から招聘(へい)した有能なスタッフに任せ、更に業績を上げるべく全国各地を縦横無尽に奔走していた。

 ただ、業績の向上に反して辞める社員が続出。社内の雰囲気は悪く、社員の表情も暗い。理由を聞いても「大丈夫です」の言葉だけ。「必ず何か問題がある」と感じたため、コーチングのスキルがある外部のコンサルタントに「社内インタビュー」を依頼した。全社員から1人30分ずつ、会社への不平不満、改善すべきこと、社長に言いたいことなどを自由にヒアリングするものだ。誰の発言かは絶対に伏せるという約束を付けた。「声」に愕然

 インタビューの結果、会社の舵(かじ)を取る者として目を背けたくなるような発言報告が、これでもかと言うくらい出た。「拘束時間が長すぎる」「上司が部下の仕事に興味を持たない」「やりがいを感じない」「上位職に魅力を感じない」「人事考課、給与が不満」「仕事をやってもやらなくても同じ。『やった損』がある」「計画的に人を育てない」など。報告の総括には、「現状の社員は持ち前の明るさと誠実さで業務にあたっているが、疲弊感や閉塞感が感じられる。重吉代表の『社員を大切にする』という考えとは、逆方向になっている」と記されていた。

 「愕(がく)然とした。100回以上見直した。その時本当に、社長は会社をしっかり見なければいけない、社長の仕事は社員の幸せを考えること、社員から愛される、社員から尊敬される、社員が辞めない会社にしようと心に決めた」と言う。現実直視し問題点を解決

 「会社の問題点は社員の声の中にある。それに真摯(し)に向き合うことこそが、解決への手段」と言い聞かせ、不満として挙がった項目を一つひとつ消していく体制作りを進めた。同時に、自分が前線に立たなくても安定的な売り上げを確保できる仕組みの構築を図った。それが投資セミナーによる集客手法で、今では全契約の9割がそこから上がっている。11月は、15人の営業マンから60本近い契約を数えた。

 「社内インタビュー」は今でも年に1回実施。「あえて不満を探して話しているようだ(笑)」。社員の満足度を高める環境作りは、今も進められている。

 この11月からは、「仕事の原点」を皆で考える研修を始めた。仕事に向かう姿勢やスムーズに進める方法、人と協力し合う大切さなどについて、1回あたり1時間半-2時間、1人15回の受講スケジュール。「仕事を通じて、魅力ある人間力をつけてもらいたい。それが結果的に、会社にもフィードバックされるはず」

 「会社の重要なターニングポイント」と位置付ける出来事から4年、会社が嫌になって辞める社員は、ほぼいなくなったという。

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