更新料問題への対応(下) 弁護士 佐藤貴美 「契約とは?」 消費者教育の材料に
住宅新報 2009年11月10日 号 5面
更新料特約の有効性をめぐっては、下級審で判断が分かれ、今後もその取り扱いにつき様々な議論がなされることが予想されます。しかしその際には、単に更新料がよいか悪いかなどを論ずるだけではなく、この一連の動きの中から、賃貸借関係にかかる長期的な対応や方向性を検討していく視点を持つことが大切であると考えます。
現在消費者契約法を活用し、賃貸住宅に係る様々な契約条項につきその効力を争う動きが活発になっていますし、更新料をめぐっては集団訴訟的な動きもあるようです。これらも、判例の集積等によって特約の有効性の基準が明確になっていくという点では一定の意義はあるところですが、民間賃貸住宅は、供給側である貸主と需要側の借主の両者が存在してはじめて成り立つという前提を十分に意識した取り組みが求められましょう。そもそも賃貸借関係には、契約の入口から出口に至るまで、当事者間の信頼関係の存在が基礎にあります(契約解除における信頼関係破壊の法理はその現れです)。すべてを権利義務関係に分解して法的紛争にしていくだけではなく、当事者間の信頼関係を基に、国民生活にとって貴重な財産である民間賃貸住宅が適正に提供され、利用されるという良好な関係を確立するためには何をすべきかという発想も欠かせないと考えられます。
また、この一連の動きを通じ、賃貸借の当事者・関係者にとって「契約をする」とは何かを再確認するよい機会ととらえることも可能です。貸主の立場からは、賃料以外の金銭は賃貸借関係から当然に発生するものではなく、あくまでも「特約」を結ぶという手続きを要することを認識し、事業計画や負担の在り方等を検討することが求められます。一方、借主の立場からも、強行法規に反せずかつ十分な手続き等を踏んでなされた契約については順守義務があるという社会生活の基本を再認識することが求められます。住宅賃貸借契約は、多くの国民にとって意識的に「契約」行為に関与する最初の機会のひとつですので、消費者保護基本法で言われる消費者教育や、消費者契約法で言われる消費者側の努力義務の実現の格好の題材であるという点も見逃せません。更に契約行為に関与する業者の立場からは、良好な賃貸借契約関係を維持するためには契約時に何が必要なのかを認識し、今後の業務に生かすことが求められます。













