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スタンダード会員限定ビル業界に話題本 門脇隆将著『康子十九歳 戦禍の日記』 高木丈太郎氏の奮闘ぶり随所に

住宅新報 2009年11月10日 号 3面

 三菱地所相談役で、東京ビルヂング協会と日本ビルヂング協会連合会会長を務める高木丈太郎さん(82)は戦時下の1944年から45年、東京・十条の東京第一陸軍造兵廠に勤労動員された。そのときの奮闘ぶりが随所に書きつづられている単行本が、ビル業界関係者の間で話題になっている。7月に出版された門田隆将著『康子十九歳

 戦渦の日記』(文芸春秋)だ。

 この本は当時、東京女子高等師範附属高等女学校専攻科の女学生だった粟屋康子さんが、高木さんたち中央大学予科の学生と一緒に高射砲などの兵器づくりに動員された時から、二次被爆の原爆症で倒れる1年余りの日記を再現したものだ。敗色ムードの戦時下、学生たちはどう生きたのか。今は老境にある当時の学生たちに著者が取材してその証言を引き出し、今日とを結び付けた。

 勤労動員された高木さんは台湾留学生の友人とともに旋盤を使って高射砲の信管づくりに従事し、康子さんたちがそれを磨き・洗う役割を担った。空手で鍛えた高木さんたちのチームは腕っぷしが強く、抜群の生産量を上げる。指導者の担当官を含めて、育まれる連帯と友情、希望。戦況は日々に厳しさを増し、中大予科学生に召集令状が届き始めると、「惜別の歌」で学生を送った。

 そして造幣廠での生産中止、女子学生は疎開へ。康子さんと家族は次々と戦渦に巻き込まれるが、その都度、高木さんと友人たちは励ました。

 日記では康子さんとその家族、女高師の友人が主役だが、『職場の戦友』も脇役的な存在となる。45年8月、広島、長崎への原爆投下と終戦。広島市長だった父と弟らを失い、重篤の母を看護しようと決意した康子さん。そのための切符の手配を頼んだのは「戦勝国」となった台湾留学生の友人だった。そして母と同じ病気で20歳目前で最期を迎える。

 運命の巡り合わせで、康子さんと同じ時代を生きた高木さんと台湾留学生の友人。長い間、音信不通が続いたが、この春、60余年ぶりに再開を果たしたという。高木さんの若かりし頃の、知られざる一面を教えてくれる1冊でもある。

 (K)

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