市況先導する中古市場 「次の一手」を模索<上> 「売り物件」不足が深刻化
住宅新報 2009年11月10日 号 1面
リーマンショック以降、すっかり冷え込んだ住宅・不動産市場にあって、最も早く動きを取り戻したのが首都圏の中古住宅流通市場。一挙に価格調整が進んだことで実需が出動、住宅ローン減税、低金利の後押しもあって、取引(成約)件数は前年を上回る水準で推移。いまなお需要は堅調だが、一方で売り物件不足が深刻化、勢いに弾みがつかない。不況の中、市況の先導役といわれる中古住宅市場だが、回復を確かなものにする「次の一手」はあるのか。
(柄澤
浩)
不動産流通市場はいま回復期にあるのかどうか。今後、どう推移するのか。実は、その判断は難しい。需要動向の帰すうを握る経済・雇用情勢が最も大きな要因だが、今後の政策など市況に影響を与えそうな未確定要因も多い。
全国に約800店の加盟店があるセンチュリー21・ジャパンの三津川一成社長は不動産市況について、「関西と中部圏はまだまだだが、首都圏については下げ止まりから回復基調にある。お客さんは出ていて、購入意欲も強いため、現場に暗い雰囲気はない。ただ、物件が少なく、払底している。これが目下の大きな問題だ。下期も不透明で、まだ強気の発言はできない」と話す。□成約数、堅調に推移
首都圏の状況を東日本不動産流通機構(レインズ)のデータで見ると、成約件数は流通量が最も多い中古マンション、中古戸建て住宅とも4-6月期から前年同期実績上回り、7-6月期では中古マンションが7427件(前年比7.9%増)、中古戸建てが2513件(同12.5%増)と、勢いが加速した格好だ。新築戸建ては再び減少に転じているが、土地の成約件数も堅調に推移している、ことが分かる。
価格動向も流通量の多い中古マンション、中古戸建てとも7-9月期は下げ止まりから上昇へ転じた。この数値は市場全体の動きであるため、個別エリア・物件が上昇したわけではないが、需要の出動で価格動向も一つの転機を迎えたことを示している。
一方、個別企業の動向はどうか。11月上旬までに明らかになった不動産流通大手の今年度上期(4-9月期)の決算・業績も市場の動きと連動した。法人仲介が不振、個人仲介が堅調。その個人仲介も取引件数は前年同期水準程度を確保したが、物件価格・取引単価の下落が響き、取扱高、手数料収入とも前年実績を割り込む形だ。
三井不動産の第2四半期(中間)連結決算で公表した三井不動産販売(グループ全体)の仲介事業実績は取扱高4851億3200万円(前年同期比13.9%減)にとどまったものの、取扱件数は1万5903件(同2.1%増)と、前年より伸ばしている。この数値に連動する手数料収入は未公表だが、三井不連結決算での仲介売上高は234億8400万円(取扱件数1万5424件)で、前年実績の265億7000万円(同1万5346件)には及ばなかったが、件数では前年を上回った。
また、住友不動産販売は取扱件数1万4764件(前年比2.6%増)、取扱高3709億900万円(同13.5%減)、営業収益193億3000万円(同7.6%減)に。東急リバブルは取り扱いが7178件(前年比7.0%増)、2633億6100万円(同7.8%減)で、手数料収入が119億7000万円(同7.0%減)だった。このほか、野村不動産ホールディングスの売買仲介部門の売上高は60億4500万円(前年同期比3.0%増)で、こちらは前年実績を上回った。
このように、金融情勢や景況などで大口・法人案件の動きは低調なままだが、個人の住宅需要は下がった、手頃になった価格を好感して、底堅い動きを見せているようだ。需要を喚起するために、各社とも動きが活発なエリアや中古マンション案件へ組織・営業体制をシフトしたことも、市場全体を押し上げた。□競争激化は必至
東急リバブルによると、「買い」顧客は今年4-5月に前年比50%増になったが、いまでも2ケタ増を維持している一方、「売り物件」の少なさが数カ月前からの課題だという。下期を展望すると、「どれだけ開拓できるかがポイント」だという。そのため、各社ともキャンペーンなどを展開して売り物件獲得に躍起で、競争激化は必至だ。売り物件不足は、価格下落で売り手が引っ込むケースが増えていること、金融不況で新規建売住宅供給が大幅に減少したことが響いたという指摘もある。
物件不足では市場の活性化はおぼつかない。いまや重要さが増している物件情報のウェブサイトの運営にも影響を与えかねない。意外に大きな問題である。













