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スタンダード会員限定更新料問題への対応(上) 弁護士 佐藤貴美 大阪高裁 貸主側勝訴判決を受けて

住宅新報 2009年11月3日 号 5面

趣旨・手続・金額に注意

 無用なトラブルの防止を

 平成21年10月29日に大阪高裁で、消費者契約法に基づく更新料特約の有効性に係る判断がなされました。裁判所は、更新料の趣旨を事案の賃貸借契約中の礼金の存在及びその趣旨と関連づけ、礼金を当初期間に係る賃借権設定の対価と、更新料を賃借期間の延長に伴う賃借権設定の対価の追加・補充としました。そして、当該趣旨に見合った適正な金額であることや、物件選択の過程や契約書等の記載に基づく借主の認識等をもとに、事案の更新料特約は借主にとって信義則に反し一方的に不利益ではないとし、消費者契約法10条により、無効とは言えないと結論づけたところです。この結果、更新料特約を無効とした8月27日の大阪高裁判決とあわせ、更新料の有効性に関し高裁レベルで判断が分かれたことになり、今後最高裁がどのような判断をするのか注目されるところです。

 ただし、現段階においても、これらの判決の結論(さらに最近の京都地裁でなされた一連判決の結論)のみをとらえて、これで○勝○敗となったとか、消費者保護の「流れ」と関連づけて整理してしまうことはあまり建設的ではありません。

 これらの判決は、いずれも消費者契約法10条に基づくものであり、この規定のもとでは、個別の契約関係における内容面、手続面の取り扱いを前提に、当事者間の情報格差等を踏まえ、「信義則」に照らし消費者に一方的に不利益か否かが判断されます。特に賃貸借関係は、物件の状況、契約手続、契約条件が様々なので、単純に1つの判決の結論を他の事例一般に当てはめることはできません。更新料等の金銭授受の特約については、当該金銭の趣旨、趣旨に見合った金銭の合理性、手続面の対応などが総合的に考慮されます。2つの高裁判決は更新料制度を一般的に有効または無効と断じたわけではありません。建物賃貸借に係る法令上の取扱いと事案の賃貸借関係における他の契約条項との関連などから更新料の趣旨をとらえ、さらに金額の合理性や、手続面の取り扱いを通した借主の認識なども踏まえて、「信義則」に反するかを判断して結論に至っている点に注意が必要です。

 これらの判決を通じて考慮すべきは、更新料特約自体は契約自由の原則から認められるという従前の裁判例などの考え方を前提としつつ、借主が消費者である場合には「特約がなされた」と評価されるためには内容面・手続面において何が必要なのかを整理して、多様性がある賃貸借契約関係において、無用なトラブルを防止するためにはどのような契約のあり方が望ましいかの検討や対応につなげていくことではないかと考えます。

 さとう・たかよし

 弁護士。44歳。89年、東北大学法学部卒。同年、総理府(現内閣府)入省。以後建設省、総務庁、公害等調整委員会等を経て01年に退職。

 91年-93年には建設省住宅局民間住宅課に在籍し、賃貸住宅標準契約書作成などの業務に携わる。著書に『基礎からわかる賃貸住宅の管理』(住宅新報社)など。

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