神奈川・藤野町で進行中 里山で長屋暮らし
住宅新報 2009年11月3日 号 4面
自然豊かな里山での生活と、隣近所の顔が見える「長屋」暮らし。かつては当たり前だった光景を、現代のスタイルに合わせて蘇らせよう--。そうしたコンセプトのもと、神奈川県の最西北端・藤野町で「里山長屋暮らし」プロジェクトが進行中だ。200坪の敷地に、4住戸とコモンハウスから成る畑付きの長屋住宅を建てる計画。来年夏の完成を目指し、ビオフォルム環境デザイン室(東京都国分寺市)の山田貴宏代表が中心となって取り組んでいる。畑付きの「長屋」
完成予想模型では、木組みの2階建てメゾネット型住宅4戸とコモンハウス1戸が長屋風に並ぶ。コモンハウス内のキッチンやトイレ、洗濯機などをシェアするほか、随所に自然エネルギーを利用した仕組みを取り入れ、資源循環型の暮らしを想定している。
例えば、レンガ積みの暖房設備「ペチカ」。その焚(た)き口に竃(かまど)を作り付けることで、調理器具としても使えるよう工夫した。また、庭先に1世帯当たり15坪ほどの畑スペースを設け、できる範囲で食料の自給を目指す。更に、その畑ではコンポスト式のトイレで生産される堆肥を利用する予定だ。
環境と調和した住宅を数多く設計してきた山田氏。その活動を知った2家族の施主から、「2世帯の共有スペースを作り、農作業もできる家をつくりたい」と依頼されたことが始まりだったという。そこからイメージが膨らみ、更に数世帯が居住する長屋風の住宅を提案した。「昔の長屋はプライベートが確保しにくく、そもそも再現するには物理的に無理がある。だが、何気ない日常の会話から育まれる『互助の精神』は受け継いでいく価値があると思う」と発想の原点を語る。
その後、居住者の募集を兼ねた勉強会を数回開いたところ、毎回20人ほどが集まった。そのうち1世帯が名乗りを上げ、残る1戸には山田氏自らが居住することになった。「参加者から『(発案者の)山田さんは住まないの?』と聞かれ、『確かに』と思って(笑)」、決めたという。想定外の事態も
居住予定者全員で構想を練り、今年3月に山田氏が図面を作成した。だがその後、工務店による見積もり査定に3カ月かかるというハプニングに見舞われたという。
プロジェクトは地産地消の観点から、地元産材を調達するだけでなく、施工も地元の人材に依頼する方向で進めている。だが町内には、棟梁が実質的に1人で切り盛りする工務店が1軒あるのみ。確かな技術力が評判の業者だが、当時手掛けていた別件の工期が延びてしまった関係で、見積もり査定期間が2カ月ほどずれ込んでしまったのだ。施主からは、不安の声も聞かれたという。
しかし、資源だけでなく経済を地域で循環させることもプロジェクトの大切な意義。「もちろん約束の期間内に済ませてもらえればそれに越したことはないが、1人で複数の案件をこなしている事情も分かっている。何より決められた枠内でスピードを求めるのは都会型の発想だ」(山田氏)。施主の不安な心情を察しつつ、理解してもらえるよう説得に努めた。
現在は、工務店とのやり取りの中で最終的な見積もりを詰めている段階。それが終わり次第確認申請へ進み、11月中に着工する予定だ。













