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スタンダード会員限定不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編(3) 賃貸借契約で手付が授受されることはありますか?

住宅新報 2009年9月22日 号 10面

Q

 私の会社は建物賃貸の仲介業者ですが、賃貸物件に客付けする場合、借主から「手付」を預かることがあります。

 しかし、この「手付」を預かる行為について、東京都の場合は、やむを得ず預かる場合であっても、また、契約が成立した場合であっても、必ず返還するように、あらかじめ重要事項説明をした上で預かるように指導されています。

 預かる金銭が「手付」なのに、なぜ返還しなければならないのでしょうか。A

 ご質問の行政指導の内容は、平成4年の東京都住宅局産業指導部長名で発出された「預り金」についてのものだと思われます。もし、そうだとすれば、ご質問の「手付」というのは「預り金」のことですから、その「手付」の意味は、いわゆる「申込証拠金」としての「預り金」の意味と解されます。

 したがって、ご質問の「手付」が預り金などではなく、本来の「手付」ということであれば、少なくとも、契約の成立の証しとして当事者間で授受されるものですから、契約の成否のいかんにかかわらず返還をしなければならないということは、あり得ないこととなります。

 仲介業者が介在する賃貸借契約の場合、通常の手続としては、借主からの契約の申込みがあった段階においては、貸主はまだ書類の審査もしていないのですから、貸主が「承諾」の返事をしようにもできないわけで、そのような段階で、仲介業者が将来の「手付金」を預かるということも考えにくいところです。Q

 そうすると、当局がその「申込証拠金」についても、原則として預からないように指導する意味がよくわからないのですが。A

 初めの質問のように、申込証拠金を「手付金」だと思っている人が多く、手付没収の意味で、申込証拠金を没収するというトラブルが生じているからなのです。Q

 ところで、根本的な質問ですが、賃貸借契約において、「手付」を授受するというケースはあるのでしょうか。そもそも、賃貸借契約で「手付」を授受することができるのですか。A

 できます(民法559条)。つまり、売買における手付の規定は、賃貸借の場合にも準用されますので、手付を授受することはできます。

 ただし、先程も申し上げたとおり、仲介業者が仲介する賃貸借契約においては、契約の当事者(貸主と借主)が直接会って契約するわけではありませんので、手付を授受するとしても、たとえば、ある時点(契約の成立時点)で申込証拠金をいったん返還し、あらためて「手付金」として授受することになるでしょう。そのようにしないと、先程の当局の指導に違反することになるからです。

 なお、この東京都の指導は、居住用の建物賃貸借についての指導ですから、事務所や店舗の賃貸借には適用されません。

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