トラブルを未然に防ぐ! 不動産調査の実務ノウハウ(62) 建物解体後の更地でも殺人事件は隠れた瑕疵!
住宅新報 2009年9月15日 号 6面
08(平成20)年9月8日、厚生労働省が「自殺の手段別にみた性・年次別死亡数の統計」を公表しました。それによると、07(平成19)年度の自殺者は3万827人で前年より9400人増加し、死亡原因別では、「縊死、絞首及び窒息」が2万1043人で68.2%と最も多くなっています。
このような社会を反映して、次のような事件がありました。
宅建業者が建物を競売で落札したところ、「Aは、平成17年7月14日午前5時頃、本件建物において縊死の方法で自殺し、消防車1台、救急車1台、その後パトカー1台が到着し、その様子を多くの近隣住民が見ていた。1階の4段目の階段で、2階の通路の欄干にナイロンの荷造り紐をかけて首を吊った」いわゆる自殺物件だったと分かり、損害賠償請求訴訟を提起しました。
しかし、09(平成21)年1月30日、さいたま地裁・片野悟好裁判長は、「一般的に、執行官は、目的物件内での自殺の噂を聞いた場合には、その真偽の調査を行うようにしており、すべての案件について積極的に自殺の有無を確認することはしていない。また、事故物件という事実以外にも取引価値に影響を与える事柄はあるのであり、それらの事柄をすべて具体的に調査するのは時間的・経済的に現実的でないこと、競売物件の所在は判明しているのであるから、入札を考える者が自ら現地調査を行い得る」と、請求を棄却しました。
自殺のあった建物が解体された場合、「嫌悪すべき心理的欠陥の対象は、もはや特定できない一定空間内におけるものに変容した」(判例)とすることが多いのですが、04(平成16)年11月、宅建業者が約1500万円で購入した更地約160平米の従前の建物には、「平成8年4月22日、西成署員が容疑者の自宅を捜索した結果、胸を刺された女性の遺体を寝室で発見した」ということが分かり、訴訟を提起した事件があります。
これについて、06(平成18)年12月19日、大阪高裁・横田勝年裁判長は、建物が取り壊されているものの、「事件は、女性が胸を刺されて殺害されるというもので、病死、事故死、自殺に比べても残虐性が大きく、通常一般人の嫌悪の度合いも相当大きい。本件売買から約8年以上前に発生したものとはいえ、その事件の性質からしても、本件土地付近に多数存在する住宅等の住民の記憶に少なからず残っている」として「隠れたる瑕疵」と認め、「損害額は売買金額の5パーセント」としました。
このように「住宅・小売店舗等が多い地域」での「残虐な事件」の場合、「閉鎖的な村社会」における「自殺事件」などでは、建物解体後や年月経過後も「風評が残存」します。
従って、「事故物件の有無の現地聞き取り調査」の方法は、売主情報だけに頼らずに、「空き家」と「居住中」とに分けて、「居住物件」では個人情報に影響するため近所の人には「この付近で何か変わったことはなかったですか」程度の聞き方をする一方、「空き家物件」では「ここに住んでいた人をご存知ですか」と具体的に聞くことが大切です。
(エスクローツムラ代表取締役・津村
重行)













