分かる不動産証券化とビジネス活用<第71回> 不動産証券化の現状と将来展望(42) 有識者に聞く 大和証券SMBC アナリスト・鳥井裕史氏(3)
住宅新報 2009年9月8日 号 3面
(田辺)
国内外の投資家はJ-REITへの投資に対して、現在どのようなスタンスにあるのですか。(鳥井氏)
J-REITの主な投資家は、機関投資家(地銀、都銀、生損保、投資顧問など)、個人、外国人などですが、地銀の多くは08年に減損処理をしているため、09年度からすぐに積極投資に転じることは難しいかもしれません。
一方、投資口価格の低下によって投資利回りが上昇したことから、個人の投資が増えてきています。個人はグローバルREIT投信(世界のREITに分散投資する投信)などを通じた投資も行っているので、その一部がJ-REIT市場への投資資金として還流しています。
外国人のJ-REITへの投資も、4月以降は徐々に回復していますが、金額的にはまだそれほど大きなものにはなっていません。他国のREITとの比較でいえば、日本のREITの投資利回りは中位クラスであり、投資口価格が下がったとはいえ過度の割安感があるわけではありません。分配金利回りスプレッド(REITの平均分配金利回り-長期金利、長期金利で資金を調達してREITで運用したときに得られる利益の幅を示す)で比較すると、日本は5%弱でシンガポール、オーストラリアなどとほぼ同水準にあるのに対し、香港は8%超、英米は2%前後の水準にあります。(田辺)
J-REITへの投資はミドルリスク・ミドルリターンであるといわれてきましたが、その割には投資口価格が大きく変動してきました。このため、本来あるべき姿に戻すべく、財務面では極力リスクをヘッジすべきではないかという意見もあるようです。(鳥井氏)
借入期間の長期化、期限分散などによって、リファイナンスリスクを低下させるとともに、分配金の安定化を図ることはある程度までは可能でしょう。しかし、リスクプレミアムは市場が決めるものなので、その変動による投資口の価格変動リスクを回避することは難しい面があります。(田辺)
昨年の終わり頃から、J-REITに対する政策措置が順次講じられてきました。その中には、導管性要件(REITに実質的に法人税がかからないようにするための要件)の改正(税務上の所得の90%超の分配会計上の利益の90%超分配)、REIT同士の合併手続きの整備(負ののれんの処理など)といった制度面の対応以外に、ファイナンス面の支援措置も盛り込まれました。(鳥井氏)
日本政策投資銀行による危機対応円滑化融資、官民ファンドの創設、銀行等保有株式取得機構の買取対象へのJ-REITの投資口の追加がその主なものです。
08年秋頃から09年初めにかけて、金融危機の影響で金融機関は貸出を極端に絞り込まざるを得なくなりました。このため、きちんとしたキャッシュフローを生み出しているREITであっても、新規借入はもちろんのこと、リファイナンス(借入金の借換え)にさえも苦慮する状況に陥りました。このように通常であればリファイナンスに何の問題もないREITまでもが資金調達に苦慮しているときに、日本政策投資銀行による危機対応円滑化融資、官民ファンドの創設計画などの支援措置が打ち出されたことは、セーフティネットとして市場に安心感を与える機能を果たしたと思います。(田辺)
これらの政策対応が取られなかったとすれば、REIT市場は混乱に陥ったかもしれませんね。(鳥井)
もし、何らの政策措置も講じられなかったとすれば、リファイナンスできないREITが物件の投げ売りに走り、その影響が不動産価格の大幅な下落を通じて不動産市場全体にまで及ぶ恐れすらあったのではないでしょうか。
(つづく)













