地域交流、新段階へ 「打ち水」イベント通じて、豊洲のまちを変えていく 『挑戦 更に一歩先へ』
住宅新報 2009年8月11日 号 19面
「打ち水」をきっかけに、新たな地域交流を--。
東京都江東区豊洲。2000年代から本格化した、いわゆる「湾岸マンションブーム」の拠点となった同地区・運河沿いなど6会場で7月25日、屋外に水をまくことで涼気をとる、大規模な「打ち水」イベントが行われた。題して、「打ち水in豊洲2009-水と緑でまちづくり-」。
主催は、豊洲地区町会自治会連合会、深川観光協会、芝浦工業大学などからなる豊洲地区運河ルネサンス協議会だ。
「打ち水」実施は08年に引き続き2回目だが、昨年は天候不良などもあって人出もまばらで、「完全燃焼」とまではいかなかったという。それだけに今回は実施規模も拡大し、本格的イベントと位置付けて検討を重ねてきた。
当日は、真夏の日差しが照りつける絶好の「打ち水日和」に。
午後1時、江東区立豊洲北小学校の児童らが、同地区「キャナルウォーク」などで、竹筒を使った水鉄砲作りを開始。地域のボランティアスタッフや母親に手伝ってもらったりしながら、水鉄砲を完成させると、運河などに向けて、早速水しぶきを上げる姿が見られた。
「本当に晴れて良かった。子供たちも盛り上がっているね」と笑顔を見せるのは豊洲シエルタワー管理組合理事長の渡辺哲三さん。豊洲生まれの豊洲育ち。半世紀以上にわたって、まちの変遷を見つめてきた。豊洲5丁目連絡協議会会長など、様々な要職を務める地域の「顔」的存在だ。
「どの会場も、子供たちが喜ぶ姿が見ることができて楽しい。これからはお父さんたちにもより多く参加してもらいたいね」と渡辺さん。子供たちから水鉄砲で水をかけられたりしながら、本当に充実した表情を浮かべる。
豊洲地区にはかつて、石川島播磨重工業(IHI)の造船ドックなどがあり、日本屈指の重工業地域としても知られた。
21世紀に入り、造船ドック跡地周辺の約50ヘクタールは、新たなマンションや商業施設の供給地として脚光を浴びた。06年に大型商業施設「アーバンドックららぽーと豊洲」が開業され、地区外からも多くの買い物客を集めるエリアへ変貌した。
マンション完工などに伴う子供の急増に備え、教育施設などの整備も急ピッチとなり、07年に豊洲北小学校が開校。住民相互の新しいまちづくり、コミュニティ作りが急務となっている。
このうち、渡辺さんの住む豊洲シエルタワーはこの地区のシンボル的存在。06年竣工。地上40階、地下1階建て。町内約30店舗がまとまった商業ゾーンと住宅ゾーン(総戸数563戸)からなる。
このうち住宅ゾーンは分譲住宅のほか、都市再生機構の賃貸住宅395戸を含む。東京地下鉄有楽町線豊洲駅に直結という高い利便性を持つ。05年の販売開始では、人気が集中。最高倍率31倍を記録するなど、「湾岸マンション」人気の象徴とも呼ばれた。
豊洲地区では、以前から地球温暖化に対する意識の高まりがあったという。地域の「まちづくり協議会」では、東京のヒートアイランド化を防止していくという視点から、建物の容積率を下げ、「風の道」を作るなどの試みがなされてきた。こうした歩みが、「打ち水」イベントにも受け継がれてきたようだ。
午後4時。造船ドックのモニュメント「跳ね橋」脇の「ららぽーと豊洲」会場には、竹筒水鉄砲を作った子供たちや多くの買い物客が集合。桶や柄杓(ひしゃく)を手に、一斉に水まきを行った。また、「打ち水」参加者にはオリジナルのリストバンドや観葉植物の苗木などがプレゼントされた。
イベントに参加した主婦の一人は、「このまちに来て2年ほど経ったが、新しい『故郷』をつくっていこうという人達が多くて、楽しい。いろいろな行事に参加しながら、まちづくりのお手伝いをしていければ」と話す。
この秋に向け、渡辺さんはハロウィンなどのイベントを計画中だ。大学や小学校などと連携を高め、具体的な準備が進みつつある。
「このまちが築いてきた良さを残しながらも、より住みやすい地域になるよう、何とか力を尽くしていきたい」(渡辺さん)。
「湾岸マンションブーム」を経て、新たな「湾岸生活の熟成」へ。様々な試行錯誤を行いながら、新世代の地域コミュニティ作りが着実に進行中だ。













