09年下期展望(上) 成約回復の中古流通に期待
住宅新報 2009年8月11日 号 1面
8月に入ってもカラリとした青空が見られない今年の夏。不透明感が続く住宅・不動産市場を象徴しているようだ。政権交代も予想される今年下期は、国政レベルでも新たな様相を呈してきた。そこで、気になる今後の市場動向を展望した。今号と次号の2回に分けて掲載。今週は6月の着工戸数が過去最低にまで落ち込んだ分譲マンション市場を始め、流通、ビル市況を報告する。「分譲マンション」
鍵は金融姿勢
物件によるバラつきはあるものの、全体的に大手不動産会社のマンション事業は回復期にあるようだ。
販売在庫を順調に圧縮することに成功し、市場の反応を見ながら新規物件も供給。大京とNTT都市開発が埼玉・大宮で分譲中の「ザ・ライオンズ大宮ウェリスレジデンス」(総戸数280戸)は、第1期58戸(専有面積70-100平米、4150万-8480万円)が即日完売する勢いで申し込みが入っているという。
なかなか新規物件の供給ができない中堅クラスを尻目に、大手を中心とした会社が市場の取り込みを着々と進めている状況だ。
一方、不動産マーケティングのアトラクターズ・ラボでは、「新規供給が抑えられている現状に、魅力を感じていない購入予定者も多い」と分析している。
新規供給は確かに激減している。08年の供給は、ピーク時の00年と比べて54%減少。09年に至っては63%も下回る予想だ。
「新規供給が減ることで、一般消費者には何のメリットもないどころか、デメリットだけが浮かび上がる」と、マンションコンサルティングのトータルブレイン・久光龍彦社長は警鐘を鳴らす。
進まない新規供給は、金融機関の融資が出にくい状況にあることが最大の要因だが、特に中堅クラスの会社のダメージが大きい。
「中堅クラスが供給するマンションは、年収500万-700万円の1次取得者層を意識したものが中心だ。中堅の供給が進まないということは、その層の新築住宅の取得機会を奪うことになる」(久光社長)。
その反動で、割安感のある中古マンションの成約が伸びているという事実はあるものの、「魅力的な新築市場を取り戻すには、大手・中堅・中小会社が供給する様々な物件の選択肢があることが第一条件」と同社長は指摘する。
下期のマンション市場が、上期同様全体的に厳しくなるという予想は業界の共通認識だ。
ただ、用地や建築資材価格の落ち着きなど、逆風が収まってきたと見る向きも多い。
「金融という血液を会社全体に循環させるためにも、金融機関にはコーポレートファイナンスではなく、物件ごとのプロジェクトファイナンスを重視した姿勢に転換してほしい」(同社長)
現時点を底に、市場全体が回復基調に入っていくには、業界の努力だけでは解決できない状況になっている。「ビル」
足元で明るさも
09年上半期における各調査機関によるオフィスビルの市況調査では、空室率が改善する傾向を示しているものはない。賃料も弱含みだ。
三鬼商事の調べでは、東京都心5区の6月末の空室率は7.25%。上昇傾向に歯止めがかからない。CBREの調査でも東京都心5区の空室率の上昇傾向は止まらなかった。
東京の大規模ビルの供給は、森ビルの調査によると09年は例年より少し少ない程度で、供給面は需給バランスを大きく崩す要因にはならないようだ。しかし新期の需要では、急激な景気後退により、08年は過去16年間で最低の水準で、供給の半分程度になったという。
今後のビルの需要動向は景気の影響を受けるため予測が難しい。川口有一郎・早大教授によると、「ビルの市況はGDPに連動しており、GDPの予測自体が非常に難しいため、シナリオによる予測になざるを得ない」という。
森ビルの東京大規模ビルのシナリオでは、日本の景気は底入れの兆候が見られるとしたうえで、新期需要は最悪水準だった08年の10分の1にとどまり、空室率の悪化が依然として続くと見ている。しかし、景気の底入れ感を反映して、足元では入居希望の引き合いが増えているという。同社の調査では、新規の賃借予定理由では、「業容・人員拡大」が3分の1で最多の理由になっているものの、「賃料の安いビルに移りたい」「事務所の統合」という理由が増えている。都心のSクラスビルの賃料が下がったため、これまで無理だったクラスのビルを希望する企業も増えているようだ。森ビルは、年末にかけて徐々に入居が決まり、年明け10年から空室率が底を打つと予測している。「中古住宅」
価格に底入れ感
不動産流通業界にとって09年上半期の明るい材料は、首都圏で中古(既存)住宅取引が件数ベースで比較的堅調に推移したことだ。最も取引の多い中古マンションを筆頭に、中古戸建て、土地などの月次成約件数が年明けから前年水準を上回り(東日本不動産流通機構データ)、件数ベースでは昨年9月の「リーマンショック」以前の状況に戻した。これは価格調整の結果、需要者にとって値頃感のある水準まで価格が下がったこと、不況の中でも潜在需要が大きかったことが背景にあると見られる。
まだ、価格は前年水準を下回っているため、回復感はあまりないが、この不況の中で値頃感のある中古住宅が動き始めたことは、今後の住宅・不動産市場にとって心強い。需要の存在と出動を確認できただけでなく、新築などへの波及も期待できるためだ。
その回復感を遅らせていた、価格水準自体もようやく底入れの兆しが見え始めてきた。首都圏の主要住宅地や既存(中古)マンションを定点観測している三井不動産販売ネットワークの「リハウス・プライスリサーチ」や野村不動産アーバンネットの地価動向調査によると、今年4-6月期の値動きを反映した7月1日時点の価格は前期(1-3月、4月1日時点)と比べ横ばいか、エリアによっては反転上昇傾向も出てきた。
リハウス・プライスリサーチでは、4-6月期の四半期変動率は住宅地でプラス0.1%(前四半期マイナス3.5%)、既存マンションでプラス0.2%(同マイナス2.4%)と、ともに07年10月1日時点以来の7四半期ぶりのプラスに転じた。前年同期と比べると、住宅地は10.5%下落、既存マンションは6.1%下落の水準にあるが、「価格下落に底入れ感」が出始めていることを示している。一昨年から下げ始めた価格がようやく一つの転機に差し掛かった。
こうした、値頃感のある中古住宅取引回復と価格の底入れという明るい材料をどう生かすか。不動産流通業界にとって、回復感を確かなものにする今年度下期の課題だ。今春から成約が活発になってきたわけだが、それと同時に売り物件の不足が目立ち始めている。「売り」在庫が減少するとともに価格が下げ渋り、落ち着いてきたということもできる。これを好機として、大手どころでは売却相談会など「売り」情報収集のためのキャンペーンを展開中だ。不況が深刻で雇用情勢も厳しいだけに、簡単に価格は元に戻らないだろうが、中古住宅市場が活性化の先行指標として不動産取引件数の堅調水準を保ち、今後の広がりにつなげたい。













