地域発インタビュー アイネスト(東京都目黒区) 井田裕一郎社長 動き始めた『ニューリッチ』 完璧なデザインで感性を刺激
住宅新報 2009年7月28日 号 5面
東京・城南エリアで建売住宅を供給しているアイネスト(東京都目黒区)の販売が好調だ。同社は新興富裕層を対象に、5000万-1億円台の建売住宅を、4月に13棟、5月に7棟、6月に16棟販売した。厳しい不動産市況の中、苦汁の決断によるリストラ断行を経て、攻めの体制を整えた井田裕一郎社長に、好調要因と商品戦略について聞いた。
(聞き手・佐藤
幹彦)
--販売が好調です。
「不動産市場は、マクロ的にはまだ厳しい状況だが、城南エリアの住宅地は完全に底を打った。加えて当社のターゲット層が住宅ローン減税拡充の恩恵を最大限に受けられることも追い風となり、買い控えていた顧客が動き始めた。また、厳しい中にあっても用地を仕入れ続けたことも功を奏したと分析している」
--仕入れ続けられた理由は。
「地元に生まれ育ち、地域は知り尽くしている。相場も分かる。更に、城南エリアの土地は極端に下落しないという読みもあり、小ロットの物件をひるまずに買った。地域密着展開がポイントだ」
「もっとも、販売好調の要因はデザイン性の高い商品『デザインドハウス』が受け入れられたことが大きい」
--デザインドハウスとは。
「『完璧にデザインされ尽くした』を意味する独自の造語で、設計者のテイストを生かし、作品として建築した住宅を指している。自動車やブランドメーカーと同様の考え方で、用地仕入れ・企画・設計・施工の一連の業務を自社一貫で行うことで実現させた。現場の職人との連携も深め、量販型ではなく、『逸品』として供給している」
--デザインに対する自信が表れています。
「失礼な言い方になるかも知れないが、本当のデザインはプロでないと分からない。例えば、部材の良さを引き出すために我々は0.1ミリメートル単位でディテールを追っている。中途半端に意見を取り入れると、せっかくのトータルコーディネートが崩れる可能性もある」
--自己満足にならないか。
「一歩では早すぎるため、半歩先行く提案を心掛け、行きすぎがないよう検証も重ねている。課題があれば完工後でも変更することもあり、ノウハウも蓄積されている」
--販売ターゲットは。
「いわゆる『ニューリッチ』層。懸命に努力し、成功を手にした人たちだ。価値のあるものへの出費を惜しまないが、多忙なあまり時間的な余裕がない特徴もある。企画や設計の打ち合わせに時間を取られないメリットを示し、同時に感性に訴えることで販売につなげている」
--攻勢に転じる体制が整いました。
「市況が悪化する前に、第2新卒としての再就職も可能な若手をリストラした。これまでの人生の中でこのときほど気持ちが落ち込んだことはなく、5kgやせた。自ら作った組織を自分でぶち壊すという自己矛盾に苦しんだが、残ってくれた従業員が『最善の措置だった』と支持してくれたことが救いになった」
「ようやく暗い時期を乗り越え、勢いを取り戻しことから、先日、社員研修旅行に出かけた。英気も養われた。攻めに転じていきたい」※井田裕一郎氏
1961年、東京・三軒茶屋生まれ。5人兄弟の長男。小学3年生の時に父親の手掛けた事業が行き詰まり、母親と共に家計を支えたことが起業家としての原点。高校・大学は夜学に通って働きながら学び、大手不動産会社に入社。92年にアイネストを創業した。二男と五男も起業家。
【企業データ】
直近決算期の売上高は約68億円、販売棟数は約70棟。
事業目的は、「洗練された住環境を企画し感性を刺激するライフスタイルを提供する」だ。













