紙上ブログ 悪徳不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽 第11回 坂口有吉
住宅新報 2009年7月21日 号 5面
入居審査
つらい立ち退き交渉(3)番外編
老母の一件には後日談がある。一家が退去した後の入居募集を当社が担当したのだ。
この部屋は利便性の良さと賃料の割安感から、広告を打つと反響が殺到。ほぼ同時に3社から申込書がきた。原則は先着順だが、今回は家主が決めることになった。
内容は、(1)国立大学教授夫妻(夫はドイツ人)(2)地元蕎麦店業界団体会長一家(3)従業員7人の広告代理店による法人契約。私は、蕎麦店業界団体会長を勧めた。経験上、地元で商売している人は信用を重んじるからだ。
大学教授は安定性が魅力だが、理屈っぽく、トラブルの際、厄介なことになる可能性がある。「先生」と呼ばれている職業の人は横柄な人も多い。7人の企業では安定性に不安があり、優良企業勤務の個人の方が信用度は高い。
家主にはきちんと説明したが、「個人は懲りた」と広告代理店を選んだ。
通常は郵送契約だが、小規模事業者なので来店のうえ契約することになった。訪れたのは「サラリーマン然とした中年男」だった。
ところが、半月ほどして物件の管理人から電話があった。「人相の悪い連中が出入りしていて、それらしい看板も出てる」と。
調べてみると都下で実弾も飛び交わす暴力団だった。
だからあれほど言ったのに……。
家主に連絡すると「オタクで何とかしてくれ」とのこと。ま、そう言うのは分かっていたが。
私を家主に紹介した住宅会社の担当者と組長は、知り合いらしいとも聞いた。もし彼が「出て行ってやってくれ」と言ったなら、アッサリ解決したかも知れない。だが、動いてはくれなかった。借りを作りたくないようだ。ま、その気持ちもよく分かる。
仕方なく地元警察署などに相談したが、らちがあかない。警官は「大変だろうけど、こっちとしては居場所が分かって、ありがたい」などと言う始末。警備は強化するが、何か起きないと動けないと言う。
家主は、「必要経費は出す」と約束していたが、経緯報告してもまるで他人事で、カネの話からも逃げ腰。私もタダで命をかける気は失せてしまった。「以降は専門の弁護士さんに依頼してください」と伝えて、管理も降りた。
この件で私が東京湾に沈められたら、本当に浮かばれなかったことだろう。
(坂口有吉不動産・社長)













