トラブルを未然に防ぐ! 不動産調査の実務ノウハウ(58) 大雨の冠水は隠れたる瑕疵ではない! 東京高裁
住宅新報 2009年7月14日 号 6面
こんな事例がありました。
98(平成10)年11月、買主は仲介業者を介して販売会社との間で、埼玉県内の建売住宅を3600万円で契約しました。
契約直前の8月、9月には、台風による降雨により、埼玉県大井町は災害対策本部を設置し、物件所在の地区に土のうを積むなどして警戒に当たった記録がありました。
また、その翌年8月には大雨洪水警報が発令され、「本件土地の駐車場の部分が冠水し、同所に駐車していた車両は、後部ナンバープレートの下付近まで水に浸った」として、買主は、慰謝料等で1000万円の損害賠償請求をしました。
しかし、「その水位は、本件建物の北西側の外壁の通気口(地面からの高さ約75センチ)にも達しておらず、床下浸水の危険があるようなものではなかった」という状況でした。
03(平成15)年9月25日、東京高等裁判所・浅生重機裁判長は、「冠水被害は、一筆の土地だけに生じるのではなく、付近一帯に生じることが多いが、そのようなことになれば、付近一帯の土地の価格評価に、冠水被害の生じることが織り込まれることが通常である。そのような事態になれば、冠水被害があることは、価格評価の中で吸収されているのであり、それ自体を独立して、土地の瑕疵であると認めることは困難」であり、「本件土地は、集中的な大量の降雨等の際にその駐車場部分などが冠水しやすいという性状があるけれども、それが売買の目的物の隠れたる瑕疵と言えない」としました。
また、「場所的・環境的要因からする土地の性状は、その地域の一般的な特性として、当該物件固有の要因とは言えない場合も多い。上記のような事柄は、当該土地の用途地域(工業地域、住居専用地域)などと異なり、簡便に調べられる事柄ではない」
「そうすると、当該業者が上記のような土地の性状に関する具体的事実を認識していた場合はともかく、そうでない場合にもその説明義務があるというためには、そのような事態の発生可能性について、説明義務があることを基礎づけるような法令上の根拠あるいは業界の慣行等があり、また、そのような事態の発生可能性について、業者の側で情報を入手することが実際上可能であることが必要である」としました。
このことから、「土地に接する道路に雨水が貯留しやすく、それによって土地の一部が冠水するという土地の場所的・環境的要因に基づく性状について、宅建業者を含む販売業者に説明義務があることを基礎づけるような法令上の根拠や業界の慣行等があるとも認め難い」としています。
現在、大自然による風水害、土砂災害、山火事、火山災害、地震災害などの発生の可能性を調査できるシステムは未完成です。
しかし、「過去の自然災害記録」がある場合は、「過去に被害記録あり」という程度の調査説明はトラブル防止のうえで必要かもしれません。
(エスクローツムラ代表取締役・津村
重行)













