トラブルを未然に防ぐ! 不動産の実務ノウハウ(57) 景観利益をこえて、景観権は有しない!
住宅新報 2009年6月30日 号 6面
JR国立駅南口の『大学通り』は、歩道を含めると幅員が約44メートルあり、自転車レーン、約9メートルの緑地や歩道が配置され、緑地部分には171本の桜、117本の銀杏等が植樹され、これらの木々が連なる並木道。周辺の大部分は第1種低層住居専用地域、高さが10メートルの低層住宅群。東京都が選ぶ「新東京百景」でもあります。
00(平成12)年1月5日、この低層住宅地域に隣接の第2種中高層住居専用地域において、マンション分譲会社が、地上14階建て、総戸数353戸の分譲と賃貸を目的にマンションの建築確認を東京都建築主事から得て、同日、建築工事に着手しました。
その翌月の2月1日、所在区域における建築物の高さを20メートル以下に制限する国立市条例が改正施行されましたが、工事の着工後でした。
地域住民らは、「大学通り周辺の景観について景観権ないし景観利益を有しているところ、本件建物の建築により受忍限度を超える被害を受け、景観権ないし景観利益を違法に侵害されている」などと主張し、「本件建物のうち高さ20メートルを超える部分の撤去」、慰謝料などを求めて、建築主・施工者・区分所有者など220人を相手に訴訟を起こしました。
06(平成18)年3月30日、最高裁判所の甲斐中裁判長は、「良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵沢を日常的に享受している者は、良好な景観が有する客観的な価値の侵害に対して密接な利害関係を有するものというべきであり、これらの者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益(以下「景観利益」という。)は、法律上保護に値するものと解するのが相当である」
「もっとも、この景観利益の内容は、景観の性質、態様等によって異なり得るものであるし、社会の変化に伴って変化する可能性のあるものでもあるところ、現時点においては、私法上の権利といい得るような明確な実体を有するものとは認められず、景観利益を超えて『景観権』という権利性を有するものを認めることはできない」とし、
「本件建物の建築は、行為の態様その他の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くものとは認め難く、上告人らの景観利益を違法に侵害する行為に当たるということはできない」と、マンション分譲会社等の不法行為を否定しました。
これは、「『景観利益』を認めても『景観権』は有しない」というものです。
新築や既存マンション販売の際の「景観などの環境調査」では、「都市計画や法令に基づく環境規制」、「隣接地の建設計画」などが主ですが、販売広告に「海・山の景色、眼下の街並み、夜景」などの表示をした場合は、「現在の景観利益は社会の変化に伴って変化するため、私法上の権利とはされていません(最高裁)」と、説明を行うことが大切です。
また、「周辺の地域は高層建築物の建築可能な用途地域や容積率であるかどうか」については、それがわかるような都市計画図面を添付して重要事項説明をすることも重要です。(エスクローツムラ代表取締役・津村
重行)













