よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第49回> 不動産証券化の現状と将来展望(20) 有識者に聞く 日本ビルファンドマネジメント 西山晃一氏
住宅新報 2009年3月31日 号 5面
「有識者に聞く」シリーズの5回目は、日本で最初にJ-REIT(日本版不動産投資信託)を立ち上げ、日本最大のオフィスREITに育てられた日本ビルファンドマネジメントの西山晃一社長に、実際に事業を推進している立場から、不動産投資市場、REIT市場の現状と将来展望について、話をうかがうことにします。〔田辺〕
最近の賃貸オフィスビル市況をどのようにご覧になっていますか。〔西山社長〕
昨年9月のリーマンショック(米大手証券会社リーマンブラザーズの経営破綻)以降の世界的な金融危機、景気悪化の影響を受け、オフィスビルテナントの需要は急速に縮小しています。新築であっても高賃料のビルでは、テナント募集に苦労する事例が散見されますし、既存ビルでもテナントが撤退したり、床面積を縮小する動きが見られるようになってきました。今後、賃料が下がってくると、テナントが現在より賃料の低いビルに移ろうとする動きも出てくると思いますが、今のところ、そこまでには至っていません。
ただ、2003年問題(03年に東京のオフィス床供給が過大になり、空室率が大きく上昇)のときと同様、多少賃料を下げてもテナントを確保することを優先する動きも一部で見られるようになってきました。〔田辺〕
賃貸オフィスビルの売買市場でも、あまり活発な動きがないように思います。〔西山社長〕
中小規模のオフィスビルの売買はあるものの、ランドマークとなるような大規模物件の売買は皆無に等しい。現在は売り手と買い手が睨み合い、市場で物件の相場観が形成されていない状況です。オフィスビルが生み出すキャッシュフローは、現在のところそれほど低下していないので、それが売買市場でどのように評価されるかが、売買価格決定のポイントになってくるでしょう。〔田辺〕
金融危機の中にあって、J-REITであるニューシティ・レジデンス投資法人が民事再生法の適用を申請したことは、投資家にJ-REITに対するネガティブな印象を与えた可能性があります。〔西山社長〕
J-REIT市場は、ここ1年間を除けば、01年の上場市場創設時から順調に成長してきました。現在では41の投資法人が上場しています。これだけの数の投資法人があるのですから、各社ごとに、経営方針、収益力、財務体質などにある程度の違いが出てくるのは自然であるともいえます。しかし、あるREITに生じた事象が1社だけの話にとどまらず、REIT市場全体の信用に悪影響を与えるようなことは防がなくてはなりません。
REIT事業に携わる者としては、REITは本来、賃貸不動産に投資し安定したキャッシュフローを生み出す金融商品であることを、改めて投資家に訴求していく必要があると思います。同時に、REITは一般企業以上に情報を開示し、投資家保護に努めているという点も、投資家によく理解して頂くように説明していくべきでしょう。これは、業界全体で取り組むべき課題です。〔田辺〕
今後、JREIT市場が回復に向かうためには、どのような条件が必要でしょうか。〔西山社長〕
常識的かもしれませんが、経済全体が底打ちしてオフィスマーケットが改善し、投資口価格が上昇に向かうことが、本格的な回復の条件になるでしょう。
JREITの制度や運営面の改正・改善についても、必要な事項は前向きに検討していくべきです。
市場回復のためには、REIT市場の関係者、すなわち、アセットマネジメントを担う資産運用会社、デット資金(借入金)を供給する金融機関、エクイティ(投資口)の募集・売買などに携わる証券会社などが、それぞれの立場をよく自覚して各々の役割を果たしていく必要があります。それが、投資家保護にもつながりますし、市場の信頼を回復させることになるでしょう。
(つづく)













