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スタンダード会員限定この人に聞く 鑑定業界が直面する課題 日本不動産鑑定協会会長 緒方瑞穂氏

住宅新報 2011年9月6日 号 9面

「かんぽの宿」評価問題への対応 制度存亡の危機と認識

 6月の定時総会後に日本不動産鑑定協会の第8代会長に就任した緒方瑞穂氏は初の女性会長。専門資格者の進むべき方向は自らが携わった「不動産鑑定業将来ビジョン~社会に根差した持続的な不動産鑑定評価制度の確立」の中に示し、その実現へ向けて始動したところで、いわゆる「かんぽの宿等」の鑑定評価問題に関して国土交通省が8月26日付で関係した不動産鑑定士らに行政処分を行った。同時に、鑑定協会会長宛に「業務の適正な実施の確保」を求める通知が出され、早速、再発防止策をまとめた。「専門資格者としての正念場」と受け止め、信頼の獲得へ「不撓不屈」の強い決意で取り組む構えだ。(聞き手・柄澤 浩、別掲、12面に関連記事)

倫理と信頼確保に全力

 ――この問題をどう受け止めていますか。

 「事案は4年前(平成19年8月31日付)に提出された鑑定評価書についてだが、これまでにない大量の処分であり、不動産鑑定評価制度に対する社会的な信頼を揺るがす恐れのある、重大な問題と認識している。既に協会としての再発防止策を8月26日付で公表すると共に、綱紀委員会に対して懲戒の調査命令を出し、迅速な対応と、厳正かつ公正な結論を求めている。万全の態勢で臨んでいきたい」

 ――具体的な再発防止策としては。

 「1つは鑑定評価監視委員会(仮称)を設置し、そこで依頼者プレッシャー通報制度の運用、価格等調査ガイドラインの実施状況の検査などを行う。委員会には弁護士、公認会計士、学識経験者を加えて透明性、客観性を担保する。次に、不動産鑑定士としての倫理の徹底を図るため、定期的に義務研修を実施すること。3つ目は本会の各種指針類(実務指針、業務指針、留意事項など)を早急に点検し、必要な改正を行いたい」

 ――今回の問題は、鑑定評価の依頼者(当時の日本郵政公社)の側にも、評価条件の変更など担当者の不適切な対応があったと、総務大臣が日本郵政社長宛に社内ルールの改善と報告を求めています。

 「確かに、鑑定評価書の納品期限間近に条件変更(従業員の雇用継続など)があったのに加え、期限までに完成品が納品できない場合の損害賠償条項もあった。鑑定評価の依頼や確認を巡る問題が凝縮されているようでもある。ただ、不動産鑑定士は専門資格者なのだから、依頼者の不適切な対応に唯々諾々としてはいけない。国土交通省通知の中に、『鑑定評価として適切でない評価条件に基づく鑑定評価を依頼者から求められたときは、評価条件の変更等を依頼者に申し入れること。それでも理解が得られない場合は、依頼を謝絶すること』を求める項目がある。それができなかったのが、今の状況を象徴している」

 ――競争入札が行われるなど、依頼者の立場が相対的に強くなったのでは。

 「鑑定評価制度が誕生して半世紀になるが、依頼者の不適切な要求をを拒絶できないのでは、制度そのものも存亡の危機と言わざるをえない。制度疲労があるのかもしれない。かつて、鑑定士にそのようなことを求める依頼者はいなかったし、言われるようでは専門資格者、鑑定士ではない。制度創設時の精神に立ち返り、志を高く、不撓不屈の強い信念でこの苦境を乗り越えたい。何より大事なのは専門資格者としての倫理と信頼の確保だ。協会綱紀委員会での対応などでも、堂々と白日の下できちんと処分するべきは処分する。襟を正して対応することこそが業界を強くする道だ」

将来ビジョンは着々と

 ――鑑定業の将来ビジョンへの取り組み状況は。

 「8月までに各委員会ごとに、短期、中期、長期に分けて、具体的な取り組み工程表を作成した。今回の将来ビジョンは(1)多様化型ビジネスモデルへの転換、(2)グローバル化への対応、(3)官需から民需への転換が3本柱だが、それを貫くのが『専門性と信頼性の向上』。その確保のため、『依頼者プレッシャー』対応は既に鑑定評価業務適正化特別委員会の課題で取り組んでいた。実行できるところからどんどん進めていく」

 「グローバル化では、英国に本部を置く国際的組織であるRICS(王立勅許不動産鑑定協会)との業務提携の交渉を進めているほか、日韓不動産鑑定会議も次回から中国が加わり、3カ国会議になることが決まった。インドネシア、ロシアとの交流も継続している。民間需要の開拓も、住宅ローンでの鑑定評価の活用など、可能性に対し着々と手を打っていきたい」

 おがた・みずほ=(株)緒方不動産鑑定事務所代表。70年慶大法卒後、大河内不動産鑑定事務所。83年に緒方不動産鑑定事務所を開設。鑑定協会副会長、東京都不動産鑑定士協会会長を経て、11年度役員改選で会長選挙に立候補、大差を付けて当選。

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