社会を読む「不動産学」-明海大学 第24回 都市環境の危機管理(1)
住宅新報 2009年3月3日 号 12面
●「都市環境の危機管理」
「都市環境の危機管理」の対象は、地震災害、都市大火災害はもちろんのこと、噴火災害、津波災害、洪水・氾濫災害、環境災害が含まれる。そのうち環境災害にあたるものには、地球温暖化、都市温暖化(ヒートアイランド)、土壌汚染、大気汚染、水質汚染、騒音・振動、非健康ガス等がある。
「都市環境の危機管理」では、すべてを扱うことは限られた15回の講義ではできないので、地震災害と都市大火災害は相対的に詳しく、津波災害、洪水・氾濫災害、地球温暖化、都市温暖化、土壌汚染については、それぞれの概要と問題点を講義するようにしている。●「都市環境の危機管理」の講義
講義には、テキストとして「都市防災工学」とその都度の配布資料を使用している。「都市防災工学」は、明海大学不動産学部不動産学叢書に指定されていて、地震災害と都市大火災害について、それぞれの考え方と分析・評価方法を、上水道施設、木造密集地区、都市再開発計画、都市ライフサイクルマネジメント等を詳しく述べている。
最初に2008年に、わが国で環境サミットが開催されたので、地球温暖化に関連する講義のトピックスからお話しよう。●えっ
殻が溶ける?
二酸化炭素排出量の増大とともに、海水中に溶け込む二酸化炭素量が増大しており、その炭酸イオンの増大が、いずれプランクトンの殻を溶かすまでになるのではと危惧されている。プランクトンは、大変に小さな動物また植物で、薄い殻の中に身体を保っている。
この殻は、現在の炭酸イオン濃度では解けないが、いずれ溶ける濃度まで高まる恐れがでてきている。プランクトンの殻が溶ける事態になると、プランクトンは死滅する。すべての海洋生物は、食物連鎖でつながっており、その段階でクジラもマグロも死滅してしまい、海洋生物はほとんど居なくなってしまうことになる。●海水面の上昇で膨大な被害が発生する
グリーンランドにある厚さ1500メートルの氷床がすべて滑り落ちて溶けると、海水面が7メートル上昇すると予測されている。また南極大陸の2000メートルを超える厚さの一部氷床が滑り落ちて溶けると、海水面が5メートル上昇すると予測されている。これらの現象の起こる時期は、研究者によって異なり、100年という人々と1000年という人々がいる。
グリーンランドが約1000年前にデンマーク人に発見された時、木々が生い茂っていたという。それから中世温暖期のあと寒冷化と氷床の発達が進んだことを考慮すると、数100年で現在の厚い氷床が形成されたのであり、融解と海へのすべり落ちはそれよりも短いと考慮する必要がある。人類の多くの古代文明と現代文明は、海岸近くに存在して発展しているが、それらの多くが水没の危機に見舞われることは、極めて大きな人類的損失となる。
2007年に国際環境開発研究所(IIED)が、10メートルの海水面上昇の影響について、分析結果を発表している。海水面が上昇し、そこに住む人々が環境難民として避難しなければならない人口を次に示そう。中国が1億4400万人、インドが6300万人、バングラディシュが6200万人、ベトナムが4300万人、インドネシアが4200万人、日本が3000万人、エジプトが2600万人、アメリカが2300万人、その他の国合計で2億100万人、世界全体で6億3400万人になる。
この対策は、基本的にいって地球温暖化を何としても防ぎ、海水面上昇を引き起こさないようにする以外にないと思われる。(明海大学不動産学部教授
石塚
義高)













