よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第45回> 不動産証券化の現状と将来展望(16) 有識者に聞く 三井不動産・内藤伸浩氏(3)
住宅新報 2009年3月3日 号 6面
〔田辺〕
今回の金融危機を通じて、ほかに気付かれた点は何でしょうか。〔内藤氏〕
金融仲介フィーやアップフロント・フィーのあり方については、慎重に考えるべきだと思います。日本ではモーゲージ・ブローカーやモーゲージ・バンカーが金融仲介機能を担う局面はあまり大きくありませんが、国際的に見るとむしろモーゲージ・ブローカーやモーゲージ・バンカーが幅広く活動をしている国が多い。
モーゲージ・ブローカーは、ローンが成立した時点で仲介フィーを得ることができます。モーゲージ・バンカーもローンそのものはすぐに売却してしまうので、ローンを付けるときにアップフロント・フィーで稼ごうとする。そうなると、仲介フィーやアップフロント・フィーを得るために、多少、無理なローンでも実行しようと考えかねない。こうして無理に組成したローンを証券化すると、今回のサブプライムローンのような問題につながります。
日本でも、ノンリコースローン実行に際しては、アップフロント・フィーの支払いが一般的になっているようですが、これが過度に大きくなり、ローン事務に関する手数料としての位置付けから逸脱することは避けるべきです。〔田辺〕
金融危機が深刻化する中で、格付け機関による格付け引き下げの動きも目立ってきました。〔内藤氏〕
確かに、一般企業でも格付けが厳しくなってきていますが、J-REIT各社に関しても格付けが引き下げられる事例が増えてきました。ただ、これは格付けの考え方次第であると思います。
格付けプロセスでは、信用リスクは「デフォルト(債務不履行)の発生確率」と「デフォルトの際の回収リスク」とで計測され、その合成結果が格付けに反映される。REITの場合、今日のようなクレジットクランチ的状況下では「デフォルトの発生確率」は高くなる局面があるかもしれませんが、「デフォルトの際の回収リスク」は非常に低いはずです。格付けでは回収リスクも重視されるべきであり、その意味からはREITの信用リスクは極めて低いと考えることもできるのではないでしょうか。〔田辺〕
不動産投資市場はどのような条件が整えば回復に向かいますか。〔内藤氏〕
不動産投資市場の本格的回復のためには、金融危機が解消に向かうこと、その結果日本の実体経済が回復に向かうことが必要でしょう。
今後も経済のグローバル化が進展することを考えれば、国内資金を社会資本や街づくりなどの国富形成のために活用する仕組みづくりを構築することが重要です。日本の投資家資金が、J-REITや私募ファンドを通じて身近な社会資本の充実にも貢献する。そうした観点からも、不動産証券化商品が投資家から見てより魅力ある投資商品になり、日本の不動産投資市場がより安定的なものになるように、国家レベルで支えていく必要があると思います。〔田辺〕
不動産証券化の将来展望について、どのように考えておられますか。〔内藤氏〕
今後とも、証券化の本質である、(1)市場性・流動性を向上させる、(2)アセット・ファイナンスを可能にする(資金が組織、人にではなく、モノに付く)という2つの機能の重要性が失われることはありません。年金、オイルマネーなどの資金運用ニーズが世界的に膨大にあるため、そのような本質を持つ証券化商品は、その運用対象として今後とも重要な位置付けを占めるでしょう。従って、不動産証券化市場も一時的に低迷しても、これを乗り越えて更なる発展を遂げていくものと考えています。
反省すべきは、(1)過度なストラクチャード・ファイナンスと(2)格付け会社の格付けのみを根拠に投資判断することの2点です。また、アセット・ファイナンスを可能にすることが証券化の本質であるのに、サブプライムローンでは、証券化商品にモノライン会社の保証を絡めたりしていました。これではアセット・ファイナンスにコーポレート・ファイナンスの要素を入れてしまうことになり、ますます信用判断が難しくなります。これも、本来の証券化の趣旨からは外れていると思います。また証券化商品を次々に組成し手数料を稼ぐために、無理な原資産の「仕入れ」や保証付与を獲得したところにも、問題があったと言えるでしょう。













