マンション市況 活性化への条件(上) 在庫処理と価格調整
住宅新報 2009年3月3日 号 1面
金融危機・世界同時不況が襲って半年近く。実体経済や雇用問題はさらに深刻化した。住宅・不動産業関係はどこを見回しても好調分野はなくなり、一刻も早い景気テコ入れ策が求められるところだ。そのなかで明るい材料となっているのは動きの早い新築・中古マンション市場に客足が戻っていること。価格さえ折り合えば潜在需要が豊富なだけに、活性化の突破口になってほしいという期待もかかる。特に新築は中古の先行指標としても位置づけられ、その動向に注目が集まる。不動産市場活性化への条件などを探った。
(柄澤
浩)
「唯一明るい材料は、マンションのモデルルームや住宅展示場に来場者が増えていること」。東急不動産の金指潔社長は2月25日、記者懇談会でこう話した。
同社の世田谷区二子玉川の大規模再開発型プロジェクトや、価格改定した茨城県守谷市の大型マンションなどを例に、明るい材料として強調した。調整幅目安は「2割程度」
いま不動産業界関係者の間で語られているマンション市況回復のシナリオは、まず販売在庫の圧縮(損切り処理、資金の回収)を進めた上で、新規プロジェクトを推進して、収益を改善しながら事業の立て直しを図るものだ。
1990年代のバブル崩壊以降の展開とほぼ同じだが、首都圏市場の場合、市場規模が08年は4万3000戸台(年末在庫は1万2000戸台)まで縮小し、事業環境が大きく異なってきただけに、バブル崩壊以降のようにその後の市場規模拡大が手助けしてくれるかどうかは分からない。
だが、まずはシナリオにあるように、手持ち物件の販売促進だ。昨秋以降の価格調整(値下げ改定)の進展と、過去最大の住宅ローン減税(10年間で最大600万円まで)効果などで、来客が前年を上回る水準まで「増加」に転じたことは確かに明るい材料で、これを定着させなければならない。
では、顧客を誘導できる価格調整の目安はどれくらいか。「首都圏新築マンションの場合、価格上昇前の03年平均が4000万円だったが、08年は4800万円と5年間で2割高くなった。この分を引き下げたことで需要者に手の届く水準になった」(ある販売大手)。つまり「2割程度」というわけである。
供給側にとっても「物件にもよるが、赤字覚悟で、また新プロジェクトを今後展開するうえで『譲れる、許容できるいい線』」なのだそうだ。
完成在庫の処分は昨秋から始まったが、「再販マンション」とか「アウトレットマンション」といった新語も生まれ、乱戦模様が続いている。
元々の事業者が売れ残りをまとめて売却し、売り主が変わって値引き販売する形や、元々の事業者が既契約者に差額を返金しながら値下げに踏み切るなど、様々なパターンが出ている。その成果は、3月の年度末に向けて明らかになっていくが、市況を惑わす『値引き合戦』の余波もある。
「広告表示以上に値引きしている物件があるが、問題ではないか」とか「都心型高級物件で億単位の値引きが出た」、「当初価格より3割から4割も値引く物件があって、周辺の物件にはいい迷惑」といった乱戦の様子が聞こえてくる。
そうした現場の混乱ぶりも「実際はどうか、自分の目で確かめて」という需要者を引き寄せできるわけで、業界にとって悪い話ではない。
物件の品質と「お買い得な」値段をアピールし、住宅に目を向けてもらえる絶好の機会になり、販促に結びつけることもできる。今度はローン審査の厳しさも
ところが、客足は戻ったものの、実態経済の悪化で状況は複雑だ。「『お買い得感』が出て反応は非常によくなった。2年ほど需要が滞留していた感じもあり、『即断即決』という人もいる。だが、今度は住宅ローンの審査が厳しくなり、ローンが付きにくくなっている」(井上克正・東京建物不動産販売社長)という状況もある。
また、「30歳代の需要のボリューム層は親から資金援助を受けるケースが多いが、その親がストップを掛けてくる。『ローンを組む時期ではない』という理由が多い」(販売大手)という声も相変わらずある。
このように、成約までに時間がかかり、また、ローン審査の厳しさなどキャンセル要因も重くのしかかっているなど、状況は「一進一退」の域を出ていない。
また、市場の先行きが見通せないままだが、「100年に一度」と言われる不況の中でも、顕在化しているマンション需要の存在は心強い。
「住宅は必要な時が買い頃」とか「不況時は買い時」という言葉もある。戻り、増えてきた客足をどう生かしていけるかだ。













