紙上ブログ 悪徳不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽 第115回 坂口有吉
住宅新報 2011年8月30日 号 5面
キャンセルから生まれたご縁(前編)
家族ぐるみの付き合いに
不動産屋にとって、売買でも賃貸でも、キャンセルが入ることほど辛いものはないが、そのキャンセルから生まれた素晴らしいご縁が2つある。
1件目は床屋さんであった。ある住宅メーカーで管理していた国立市の貸店舗に、近く独立をするという理容師さんから申し込みが入ったのだが、その直後にキャンセルになった。理由は、奥さんが病気で倒れてしまった、というもの。当初は「ありがちな言い訳」くらいに思っていて、それだと管理会社に申し訳ないので、「キャンセルはお受けしますが、申し込みをいただいてから物件を止めていた期間、1カ月分の賃料は支払ってやってもらえないでしょうか?」と言うと快く支払ってくれた。
これには私も正直なところ驚いた。たとえ約束していても、本当に支払ってくれた人は、後にも先にもその床屋さんだけ、くらいの話だから、である。病は本当
一旦はご縁が切れたが、その後、私が勤めていた不動産会社が倒産し、隣町に店を開いたところに、再びひょっこり現れたのだ。私も驚いたが、床屋さんも驚いた。「家内の病気が良くなったので、再び店を探しています」とのこと。実は、その時初めて「奥さんが病気だったというのが本当の話だった」と分かった次第。疑って申し訳ないことをした。酷いオマケ
この話には酷いオマケがある。私が話をつけて床屋さんから家主さんに振り込んでもらった10万円、なんと、管理会社が、「うちも広告代が掛かっているので」と領収証を持参して家主さんのお宅に伺い、有無を言わせず集金していったとか。私は1カ月分の賃料を補償してもらうことで管理会社の体面が保てるようにと配慮したのであって、管理会社の収益になるよう話したものではない。ちなみに、数年後、その物件は当社で管理することになった。
結局、店舗は当社では見つけられなかったが、以来ずっと家族ぐるみで、その床屋さんを使わせてもらっているし、逆に、その床屋さんの従業員の部屋探しは当社に任せていただいている。私事だが、私が今の女房と再婚した際の婚姻届には、床屋さんと従業員さんに証人の判を押してもらった。良い関係は今も続いている。
(坂口有吉不動産・社長)













