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スタンダード会員限定3.11 居住者台帳で避難スムーズ 「命より大事な個人情報はない」 横須賀・湾岸エリアの高層マンション

住宅新報 2011年8月30日 号 4面

 〈1面関連〉

 神奈川県横須賀市の湾岸エリアに、全309戸約1000人が居住する「ソフィアステイシア」がある。4棟構成の一般的な高層マンションだが、屈指の『防災力』を誇ることで地元では知られた存在だ。先の震災で、それが図らずも証明された。

 以下は3月11日当日の動きである。地震発生から間もなく、一帯では大津波警報が鳴り響いた。これを受けて、管理組合とマンション自治会の連合組織『自主防災会』の役員が低層階に住む居住者に対し、上層階へ避難するようハンドマイクを使って呼び掛けを開始。同時に屋内を巡回し、高齢者など自力での避難が難しい『要援護者』の移動を手分けして助けた。間もなく、要援護者は最上階の集会室、それ以外の住民は主にその共用廊下などへの避難が完了した。

 並行して、メンバーが最上階に津波監視用の望遠鏡を設置。湾内の潮位変化を確かめるためだ。この日の最大波高は1.6メートルで、幸いにも岸壁を超えることなく沈静化した。都内の勤務先から初動対応を指示し続けた災害対策本部長の安部俊一氏は、「毎年防災講習や訓練を繰り返し行ってきた成果」と胸を張る。

 同マンションが立地するのは、マンション群と大学、商業施設などが集まる「よこすか海辺ニュータウン」。海沿いならではの眺望が魅力だが、半面、津波や埋め立てによる液状化リスクも抱える。こうした地理的条件に対する危機感から6年前に自主防災会を組織し、防災対策投費を行った。5年間で投じた額は累計1000万円に上り、要援護者宅に無償で貸与している避難用担架や車いすの購入費も、ここから捻(ねん)出している。

 だが、多額のお金をかければ万全、とは言えないのが防災の難しいところ。どんな資材も、まず身の安全が保証されなければ役に立たないからだ。この考えに立ち安部氏が取り組んだのが居住者台帳の整備。血液型や既往症、常用薬など住民1人ひとりの細かい情報を網羅したもので、これがあれば救命活動を迅速に行うことが可能になる。

 「当初は反対の嵐だった」と安部氏。「プライバシーを知られたくない」「(個人情報)流出時の責任は誰が取るのか」といった声が殺到したのだ。これに対し、「自分1人の力で家族を守るのは難しい。周囲と情報を共有し協力することで、結果的に自分たちの命が守られる。命より大事な個人情報などない」と説得。管理に際しては自治会長でもある自分が全責任を負うことも約束した。1回目の届け出では提出率が75%、その後更に増え、現在は95%に上る。そしてまさに今回、要援護者の避難という場面で台帳の力が発揮された。

 今後30年以内の東海地震の発生確率は、87%とされる。『その時』に備え、防災に一層力を入れる心構えだ。

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