知って得する建物の豆知識(8) 『インゴ』という隠語 意思疎通に結果
住宅新報 2009年3月31日 号 14面
どの業界にも隠語があります。部外者が分からないように、仲間内だけで意思の疎通を図るのが隠語の目的です。建築業界にも多くの隠語がありますが、工事現場などで最も多く耳にするのが材木のサイズに関するものです。
「インゴ」とは1寸5分=45ミリメートルの角材を指しており、ほかにも「インナナ」(=50ミリメートル角)、「インサン」(=40ミリメートル角)などがあります。
また、隠語には地方性も強く、同じ隠語でも地方によって意味が異なる場合があります。これは、昔の工事現場で流れ者の大工などを差別するために用いられたものです。少し隠語の事例を挙げてみましょう。
「げんちゃん」「げんぞう」はどちらも同じ意味ですがやっつけ仕事のことで、いわば手抜き工事を指しています。
また、「ずぶなま」とは木材が乾燥されていない生木の状態のことです。含水率については前にも触れましたが、木材が強度を発現する重要な要因で、「ずぶなま」な木材を使えば割れや施工後の強度低下を避けることはできません。
最近はあまり聞きませんが、昔は八百屋の親父などが80円のお釣りを返すときに「はい、80万円ね」などと言っていました。現場でも「そこ、1円30銭ね」と言うことがあります。意味は「1メートル30センチ」のことで、隠語とも言えないような可愛いものですが、全くの部外者には分からないかもしれません。
上棟の時には、屋根の大梁(はり)などをクレーンでつり上げますが、この時に梁の断面で背の部分を上にしてつり上げることを「男にする」と言います。木材には年輪が密な部分と粗な部分があります。密な部分を「背」といい、梁などは背を上にして使います。現場では「男にしてつり上げる」などと使います。
「つら合わせ」と聞くと何か物騒なイメージもありますが、現場では面を合わせることを意味しています。例えば玄関の上がり框(かまち)と廊下の面を合わせる場合などに「つら合わせ」と言います。逆に段差を付けて納める場合は「チリを取る」と言います。チリとはおおむね数ミリから数センチの範囲を指し、ミリ以下のチリは「糸チリ」と言います。
階段の形式には真っすぐ上る「直階段」、90度角度を変えて上り降りする「下回り」「上回り」などがあります。なかでもU字型の階段を「行って来い」と言います。2階と1階の違いはありますが、Uターン状に昇降位置に戻ってくるのですから、実に言い得て妙とも言える隠語です。
この「行って来い」は別の意味でも使われます。例えば、柱と柱の間に敷居のような水平材を入れるときには、両方の柱に凹加工を行い、水平材には凸加工をします。このときに柱の凹加工の一方を深くしておき、水平材の凸の片方を深く入れ、後に戻してもう一方の凸をはめ込みます。この納まりのことを「行って来いで納める」と言います。
建築現場は隠語や現場用語が非常に多く、筆者も若い頃は何を言われているのか分からないこともしばしばでしたが、いつの間にか自分が隠語を連発している姿に驚くこともあります。
(建築家・中村
義平二)













