よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第166回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く 日本インフラストラクチャーパートナーズ代表取締役 橋本 武寛氏
住宅新報 2011年8月16日 号 3面
大震災で機能した官の『無駄』
何でも民営化は論外(田辺)
営利を追求する民間レベルでも震災復興に役立つことはないのでしょうか。(橋本社長)
震災復興のために民間が出来ることは節電だけなのかと言うことになってしまいますが、民間がやった方が良い事業も限定的ですがいくつかあると思います。誰がどう見ても明らかに民間のノウハウが官に勝る分野と、一定レベル以上のリターンを期待できる分野です。前者の例としては、被災者に対する住居の提供がありますし、後者の例としては将来有望な被災企業の復興に向けた資金およびノウハウの提供があります。
被災地もしくはその代替地における住宅供給事業は、民間に任せた方が良い分野です。官が主体になると画一的になって、利用者のニーズに必ずしもそぐわない多くの住宅が供給されてしまう恐れがあることは過去の例からも明らかです。官が家賃保証をして、その家賃の範囲で民間が知恵を出し合い、競い合ってより質の高い住居を提供するスキームが考えられます。
また、被災企業の復興資金については、一般企業の当座の救済策は官が面倒を見るべきだと思いますが、復興後に高い成長が期待できる企業に関しては、民間の資金とノウハウで復興させる方が効率的だと思います。それぞれの企業に適した延命策、もしくは再建策に応じて官民の役割分担を明確にすることが必要ではないでしょうか。(田辺)
ご指摘の通り、官民の資金の性質の違いを踏まえ、かつ官民のそれぞれの優位性が生かされるように役割分担すべきなのに、ともすればその点が曖昧な議論になってしまうことがあります。(橋本社長)
その通りです。民間企業の方が効率がよいということで、事業性のあるものは何でも民営化すればよいというものではありません。官に任せた方がよい場合があるのも事実です。今回の震災はそれを如実に示したとも言えると思います。例えば、今回の震災であれだけダメージを受けた東北自動車道を、たった1週間で全面復旧させることが出来たのは、実質的に官が主導する道路保有機構および高速道路会社が所有・運営していたからだという見方もできます。
ともすれば、道路管理者と工事業者との緊密な関係や
道路管理者と国の緊密な関係は批判の的になりがちですが、こうした関係が相互の意思疎通をスムーズにし、復旧を早めたことも事実でしょう。また、高速道路会社が実体的には国そのものであることは、民間工事業者の緊急協力体制において高い信用力として機能しましたし、国が復旧工事費用を負担するスキームの即時発動にもつながりました。国道、県道、市町村道もしかりです。
これらの要素およびそれを維持するための煩雑な仕組みは「無駄」の代名詞とされていたものばかりですが、今回の震災で大活躍したのはこの「無駄」から派生する力関係や信用力だったとも言えるわけです。
こういうときこそ、官が持っているある意味での「無駄」、もしくは「採算度外視体制」が機能するとも言えるのではないでしょうか。
また、日本においては歴史的にこの「無駄」が雇用を生み出すことにより、円滑な富の再配分という重要な役割を担ってきたことも忘れてはなりません。「無駄」の中で生計を立てている人が大勢いる中で「無駄」が少なくなってきた結果として、増税という別の富の再配分システムを稼働させなければ、社会不安の増大は避けられない状況になりつつあります。
民間の経営では、徹底的に「無駄」を排除することを良しとします。民営化した方がよいかどうかは、その得失をきちんと整理し、官民の役割分担を慎重に規定したうえで判断すべきだと思います。
(つづく)













